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配偶者が認知症のとき、遺言だけで相続対策は十分?知っておきたい成年後見制度

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2026.10.06

【1. はじめに】
「配偶者が認知症です。自分が遺言を書いておけば、相続のときに成年後見人を付けなくても大丈夫でしょうか?」

相続のご相談では、このような質問を受けることがあります。

結論からいうと、遺言を作成していても、成年後見制度の利用が必要になる可能性はあります。

なぜなら、遺言と成年後見制度は、そもそも役割が違うからです。

【2. 遺言は「亡くなった後」の財産の承継を決めるもの】
遺言は、自分が亡くなった後に、誰にどの財産を引き継がせるのかなどをあらかじめ決めておくためのものです。

たとえば、「自宅は配偶者に相続させる」「預貯金は子どもに相続させる」といった内容を遺言に定めることができます。

遺言を作っておくことで、相続人同士の話し合いを減らせるケースもあります。

ただし、それだけで認知症の配偶者に関するすべての問題が解決するわけではありません。

【3. 成年後見制度は「本人の権利や財産」を守るためのもの】
一方、成年後見制度は、認知症などによって判断能力が十分でない方について、その権利や財産を守るための制度です。

本人に代わって法律行為などを行う必要がある場合に、家庭裁判所が後見開始の審判を行うことで、成年後見人が選任されることがあります。

つまり、

「遺言=亡くなった後の財産の承継」
「成年後見=本人の判断能力を補い、権利や財産を守る」

という違いがあります。

【4. 遺言があっても成年後見人が必要になることがある】
ここが今回のポイントです。

「遺言で相続人や相続割合を決めておけば、認知症の配偶者について成年後見人は必要ない」

とは限りません。

相続の状況によっては、認知症の配偶者自身が手続きに関わる必要が生じることがあります。

特に、遺言の内容だけでは処理できない問題が発生した場合には、本人の判断能力が問題になる可能性があります。

【5. 遺産分割協議が必要になるケースに注意】
たとえば、遺言がない場合や、遺言だけでは処理できない財産がある場合などには、相続人全員で遺産分割について話し合う必要が生じることがあります。

しかし、認知症のため本人が十分に判断できない状態であれば、そのまま本人に遺産分割協議をしてもらうことはできません。

このような場面では、成年後見制度の利用が必要になる可能性があります。

「遺言があるかどうか」だけではなく、「相続が発生した後に、どのような手続きが必要になるのか」まで考えておくことが大切です。

【6. 相続人同士の対立にも注意】
さらに注意したいのが、相続人同士で意見が対立するケースです。

たとえば、子ども同士で相続財産の分け方について意見が合わず、その中に認知症の配偶者がいるとします。

本人の権利を守る必要があるにもかかわらず、本人自身が十分に判断できないのであれば、成年後見制度が問題になることがあります。

遺言を作っておけば、こうしたトラブルをすべて防げるわけではありません。

【7. 「配偶者に財産を残す」だけでは十分とは限らない】
認知症の配偶者がいる場合、「配偶者に財産を残したい」という気持ちは当然のことだと思います。

しかし、財産を残すことと、その財産を将来どのように管理・利用していくかは別の問題です。

配偶者が認知症になった後の生活費や自宅の管理、預貯金の管理などについても、早い段階から考えておく必要があります。

相続対策は、「誰にいくら残すか」だけではなく、「その後、その人がどう生活するのか」まで考えることが重要です。

【8. 税金だけを見て相続対策をしない】
相続対策というと、相続税をいくら減らせるかという話に目が向きがちです。

もちろん税金も重要ですが、それだけではありません。

認知症の配偶者がいるご家庭では、

・遺言書をどう作るか
・相続後に遺産分割協議が必要になる可能性はあるか
・成年後見制度が必要になる可能性はあるか
・配偶者の生活をどう守るか

といった点をまとめて考える必要があります。

税金だけを計算して「これで相続対策は完成」と考えないことが大切です。

【9. 生前に確認しておきたいこと】
認知症の配偶者がいる場合、できれば本人の判断能力が十分な段階から、家族で将来について話し合っておくことをおすすめします。

具体的には、

「誰に財産を残したいのか」
「自宅をどうするのか」
「配偶者の生活費をどう確保するのか」
「相続が発生したときに、どんな手続きが必要になるのか」

などです。

必要に応じて、税理士だけでなく、司法書士や弁護士など、それぞれの専門家にも相談しながら準備しておくと安心です。

【10. まとめ】
配偶者が認知症の場合、

「遺言を書いておけば成年後見人は必要ない」

と単純に考えることはできません。

遺言と成年後見制度は、それぞれ目的が異なる制度だからです。

遺言は、亡くなった後の財産の承継を考えるためのもの。

成年後見制度は、判断能力が十分でない方の権利や財産を守るためのものです。

だからこそ、相続対策では「遺言を書いたから終わり」ではなく、その後の生活や財産管理まで含めて考えることが大切です。

相続は、亡くなった瞬間から始まるものですが、家族にとっての準備は、その前から始めることができます。

特に認知症のご家族がいる場合は、問題が起きてから対応するのではなく、「今のうちに何を決めておくべきか」を一度整理してみてはいかがでしょうか。