不動産小口化商品を相続した場合、「いったいいくらで相続税を計算するの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
不動産を小口化した商品は、現物の不動産とは少し違う形で保有することになります。そのため、相続税を計算するときに、単純に「購入した金額」で評価すればよいとは限りません。
今回、国税庁から、不動産特定共同事業等によって小口化された特定小口化商品の目的となっている貸付用不動産について、その評価方法の詳細を示す通達案が公表されました。
今回は、この通達案の内容をもとに、相続人が知っておきたい不動産小口化商品の評価方法について、税理士の視点からわかりやすく解説します。
1.不動産小口化商品の相続税評価が注目される理由
不動産小口化商品とは、一定の不動産を小口化し、多くの投資家が持分を持つような形の商品です。
現物の不動産を丸ごと所有する場合と比べて、比較的少額から不動産に投資できることから、資産運用や相続対策などの場面で利用されることがあります。
一方で、相続が発生すると、その商品の相続税評価をどのように行うのかが問題になります。
今回の通達案では、不動産特定共同事業等によって小口化された特定小口化商品の目的となっている貸付用不動産について、評価方法の具体的な考え方が示されています。
相続人にとっては、「自分が持っている小口化商品が、相続税の計算上どのように評価されるのか」を確認することが重要です。
2.評価の原則は「課税時期における通常の取引価額」
今回の通達案では、特定小口化商品の目的となっている貸付用不動産について、原則として「課税時期における通常の取引価額」によって評価するとされています。
ここでいう課税時期とは、相続税や贈与税の計算において評価を行う時点です。
つまり、単純に、
「購入したときの価格だから、この金額で評価する」
という考え方ではありません。
相続が発生した時点で、その不動産が通常どの程度の価格で取引されるものなのか、という考え方が基本になります。
ただし、一定の条件を満たす場合には、別の方法によって評価することが認められる仕組みも示されています。
3.「特定小口化商品」とは何か
今回の通達案で重要になるのが「特定小口化商品」です。
これは、不動産特定共同事業等によって小口化された商品を指し、その商品によって貸付用不動産を対象とするものです。
小口化商品を相続した場合、相続人が直接その不動産を所有しているわけではないため、
「普通の土地や建物と同じように評価すればよいのか」
という疑問が生じます。
今回の通達案は、こうした商品の目的となっている貸付用不動産について、具体的な評価方法を示したものといえます。
4.「元本等相当額」を使った評価方法とは?
今回の制度を理解するうえで、重要な言葉が「元本等相当額」です。
これは、特定小口化商品の価格のうち、元本の額を構成する貸付用不動産の価格に相当する部分の金額を指します。
この元本等相当額について、適正な価格情報に基づくものと認められる場合には、精通者意見価格等を参酌して評価できるとされています。
つまり、
「小口化商品の価格をそのまま見る」
のではなく、
「その商品の中に含まれている貸付用不動産の価値がどの程度なのか」
という点に着目して評価する仕組みです。
相続人としては、商品の購入金額だけで判断せず、元本等相当額がどのように算定されているのかを確認することがポイントになります。
5.P1・P2・P3の3つの価格を比較する
今回の通達案では、評価に関して「P1」「P2」「P3」という3つの金額が登場します。
それぞれの意味を整理すると、次のようになります。
P1は、特定小口化商品の元本等相当額を基礎として算定する金額です。
基本的には、
「元本等相当額×90%」
によって計算します。
一方、P2は、課税時期における貸付用不動産の「精通者意見価格」です。事業者が有する適正な価格情報も含まれます。
そしてP3は、課税時期前1年以内に行われた鑑定評価による貸付用不動産の鑑定評価額に95%を乗じた金額です。
一定の条件を満たし、P2またはP3の金額が明らかな場合には、P1・P2・P3の3つの金額のうち、最も低い金額によって評価できるとされています。
6.P1の「90%評価」はどのような仕組みなのか
P1の基本的な計算方法は、
「特定小口化商品の元本等相当額×90%」
です。
ただし、課税時期前5年以内に開始された事業に係るものについては、元本等相当額を基に、別途示されている評価方法に準じて修正した金額の95%とされています。
また、課税時期前5年以内に開始された事業に係るもの以外について、元本等相当額による評価が不適当と認められる場合には、売買実例価額等の価格情報を使って元本等相当額を修正できる場合も示されています。
このため、「小口化商品だから一律に購入価格の90%」という単純なルールではありません。
商品の取得時期や事業の開始時期、価格情報などを確認する必要があります。
7.不動産鑑定評価額を使う場合の注意点
P3は、不動産鑑定評価を利用した評価方法です。
ただし、どのような鑑定評価でもよいというわけではありません。
通達案では、課税時期前1年以内に行われた鑑定評価による貸付用不動産の鑑定評価額で、事業者の依頼により不動産鑑定士が鑑定評価した価額のうち、課税時期に最も近い日におけるものに限るとされています。
そして、
「鑑定評価額×95%」
によってP3を算定します。
そのため、相続人が手元にある資料を確認するときには、鑑定評価があるかどうかだけでなく、いつ、誰が、どのような条件で鑑定評価を行ったのかまで確認することが重要です。
8.「最も低い金額」で評価できるのはどんな場合?
今回の評価方法で、相続人が特に気になるのが、
「P1・P2・P3のうち、一番低い金額を使えるの?」
という点ではないでしょうか。
通達案では、特定小口化商品の元本等相当額が適正な価格情報に基づくと認められる場合に、精通者意見価格等を参酌して評価できるとされています。
そして、P2またはP3の金額が明らかな場合には、P1・P2・P3のうち最も低い金額によって評価できるとされています。
ただし、単純に3つの数字を探して、一番低い数字を選べばよいという話ではありません。
そもそも、元本等相当額が適正な価格情報に基づくと認められるか、P2やP3の金額が制度上の条件を満たしているかなどを確認する必要があります。
ここは実際の相続税申告でも注意したいポイントです。
9.事業者が破綻した場合などは評価方法が変わる
もう一つ重要なのが、事業者の破綻などによって事業の継続が難しくなったケースです。
通達案では、事業者の破綻等の事情により、特定小口化商品に係る事業の継続が不可能または著しく困難と見込まれる場合で、精通者意見価格等に該当するものがないときには、別の評価方法によることとされています。
具体的には、課税時期前5年以内に取得等された貸付用不動産の評価について定められた方法に準じて評価する考え方です。
不動産小口化商品というと「不動産を小口で持っている」というイメージが強くなりますが、実際には商品を運営する事業者の状況も評価に影響する可能性があります。
相続が発生した場合には、商品の不動産だけでなく、事業者や事業の状況も確認することが大切です。
10.相続人が確認しておきたい3つのポイント
最後に、不動産小口化商品を相続した方が確認しておきたいポイントを3つ整理します。
1つ目は、「どのような商品なのか」を確認することです。
商品名だけで判断せず、契約書などを確認し、どの不動産を目的としている商品なのかを把握しましょう。
2つ目は、「元本等相当額や価格情報」を確認することです。
事業者から提供される資料の中に、元本等相当額や不動産の価格に関する情報がないかを確認します。
3つ目は、「鑑定評価などの資料があるか」を確認することです。
課税時期前1年以内に行われた鑑定評価がある場合には、P3の計算に関係する可能性があります。
不動産小口化商品を相続した場合、商品の購入価格だけを税理士に伝えるのではなく、契約書、運営事業者からの資料、価格情報、鑑定評価書など、手元にある資料をまとめて確認してもらうことが重要です。
まとめ
今回の通達案では、不動産特定共同事業等によって小口化された特定小口化商品の目的となっている貸付用不動産について、課税時期における通常の取引価額によって評価することが示されました。
一方で、特定小口化商品の元本等相当額が適正な価格情報に基づくと認められる場合には、P1・P2・P3という複数の価格を比較し、一定の条件のもとで最も低い金額によって評価できる仕組みも示されています。
特に、
・元本等相当額
・P1の90%評価
・P2の精通者意見価格
・P3の鑑定評価額×95%
・課税時期前5年以内に開始された事業
・事業者の破綻等による事業継続困難
といったポイントは、相続人として押さえておきたいところです。
ただし、今回示されているのは通達案です。
実際に相続税の申告を行う際には、最終的に確定したルールを確認したうえで、その商品の契約内容や価格情報などを踏まえて評価する必要があります。
不動産小口化商品を保有している方に相続が発生した場合は、「小口の商品だから簡単に評価できる」と考えず、まずは商品に関する資料を整理することから始めるとよいでしょう。
相続税の評価は、最終的な税額に直結する重要な部分です。
特に不動産小口化商品のように、一般的な不動産とは異なる評価方法が関係するものについては、早めに専門家へ相談し、どの評価方法を使うことができるのかを確認しておくことが大切です。