staffblog スタッフブログ

年金受給者は要注意!株式配当の確定申告で医療費の窓口負担が変わる時代へ

スタッフブログ

2026.11.03

年金を受け取りながら、株式投資をされている方はいらっしゃいませんか?

実は、株式の配当金などの金融所得が、75歳以上の方が利用する後期高齢者医療制度の医療費窓口負担や保険料に関係しています。

これまでは、株式配当について確定申告をするかどうかによって、医療費の窓口負担割合や保険料の判定に差が生じる場合がありました。

しかし、令和8年の法改正によって、この仕組みが変わることになりました。

今回は、年金を受給されている方に知っておいていただきたい、株式配当と確定申告、そして医療費負担の関係について解説します。


1.後期高齢者医療制度とは?75歳以上の医療費負担の基本

75歳以上の方が加入する医療保険制度が「後期高齢者医療制度」です。

医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合は、原則として1割ですが、所得等によって2割または3割となります。

また、毎年の所得などを基に、後期高齢者医療保険料も計算されます。

つまり、年金収入だけでなく、株式の配当金などの所得も、一定の条件のもとで医療費負担や保険料に影響することがあるのです。

2.株式配当や金融所得は医療費負担に関係する?

株式投資をしている方の中には、上場株式の配当金を受け取っている方も多いと思います。

こうした配当金などの金融所得は、確定申告を行うことで、市町村が所得情報を把握できる仕組みになっています。

そのため、確定申告をした場合には、所得の状況によって後期高齢者医療制度の窓口負担割合や保険料に影響することがありました。

一方、特定口座(源泉徴収あり)を利用し、確定申告をしなかった場合には、市町村がその金融所得を把握できないケースがありました。

この違いが、今回の制度改正につながっています。

3.これまでは確定申告をするかどうかで差が生じていた

これまでの制度では、同じような金融所得があっても、確定申告をする人としない人で、後期高齢者医療制度の負担に差が生じる場合がありました。

例えば、次のようなケースです。

【Aさんの場合】

  • 年金収入がある
  • 上場株式の配当金を受け取っている
  • 配当金について確定申告をしている

【Bさんの場合】

  • 年金収入がある
  • Aさんと同程度の上場株式の配当金を受け取っている
  • 特定口座(源泉徴収あり)を利用し、確定申告をしていない

この場合、Aさんの金融所得は市町村が把握できる一方、Bさんの金融所得は把握できないケースがありました。

その結果、同程度の金融所得があるにもかかわらず、医療費の窓口負担割合や保険料に違いが生じることがあったのです。

4.令和8年の法改正で何が変わるのか?

今回の改正は、令和8年6月5日に公布された「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)」によるものです。

改正のポイントは、金融所得に関する情報を、確定申告の有無にかかわらず、後期高齢者医療制度の判定に反映できるようにすることです。

具体的には、金融機関などが税務署長に提出している金融所得に関する法定調書等について、後期高齢者医療広域連合にもオンラインで提出する仕組みが設けられました。

これにより、上場株式の配当金などについて、確定申告をしていない場合でも、一定の金融所得情報を把握できるようになります。

今回の改正は、確定申告をした人としなかった人との間に生じていた不公平を是正することを目的としています。

5.令和11年1月から施行予定!具体的なスケジュール

今回の制度改正は、公布後5年以内に政令で定める日に施行されることになっています。

令和8年10月16日に開催された社会保障審議会医療保険部会では、令和11年1月の施行案が示されました。

現時点で示されているスケジュールは次のとおりです。

【令和11年1月】

制度の施行予定。

【令和11年8月】

初回として、令和10年分の年単位の金融所得が記載された法定調書を反映する案が示されています。

【令和12年8月以降】

配当や剰余金の分配などの支払調書を含め、対象となる法定調書に記載された金融所得を反映する予定です。

※具体的な施行日や運用方法については、今後の政令等による確定内容を確認する必要があります。

6.確定申告をしなければ医療費負担を抑えられる時代は終わる?

今回の改正で、特に注意していただきたいのがこの点です。

これまでは、特定口座(源泉徴収あり)で受け取った株式配当などについて、確定申告をしないことで、後期高齢者医療制度の所得判定に反映されないケースがありました。

しかし、今後は確定申告をしていなくても、一定の金融所得情報が把握され、窓口負担割合や保険料の判定に反映される仕組みになります。

つまり、これまでのように、

「確定申告をしなければ医療費負担や保険料に影響しない」

と単純に考えることはできなくなります。

株式配当を受け取っている方は、今後の制度変更を踏まえて、確定申告の方法を考える必要があります。

7.年金受給者が今後注意したい確定申告のポイント

年金を受給されている方にとって、確定申告は毎年の大切な判断事項です。

特に株式配当がある方は、次のような点を確認しておきましょう。

確認しておきたい5つのポイント

  • 株式配当を確定申告した場合、所得税はどうなるか
  • 住民税への影響はどうなるか
  • 後期高齢者医療保険料にどのような影響があるか
  • 医療費の窓口負担割合に影響する可能性はあるか
  • 医療費控除などを利用するメリットはあるか

これまでは、確定申告をすることで税金が還付される一方、医療保険料などが増える可能性も考慮する必要がありました。

今後は、確定申告をしない場合であっても金融所得が反映される仕組みになるため、これまでとは違った視点で判断することが大切です。

8.税理士が解説!確定申告は税金だけで判断しないことが大切

確定申告をするかどうかを考える際、どうしても所得税の還付額に目が向きがちです。

しかし、年金受給者、特に後期高齢者の方の場合、税金だけで判断するのはおすすめできません。

例えば、株式配当を申告することで所得税の還付を受けられる場合でも、住民税や医療保険料などに影響する可能性があります。

また、医療費の窓口負担割合についても、所得状況によって判定が変わることがあります。

大切なのは、

  • 所得税
  • 住民税
  • 後期高齢者医療保険料
  • 医療費の自己負担額

を総合的に考えることです。

特に今回の改正では、金融所得の把握方法そのものが変わるため、過去の確定申告の経験だけで判断しないようにしましょう。

9.まとめ|年金生活の方こそ金融所得と確定申告の関係を知っておこう

今回の制度改正のポイントを整理します。

今回の改正で押さえておきたい5つのポイント

  1. 後期高齢者の医療費窓口負担は原則1割で、所得等によって2割・3割となる
  2. これまでは確定申告の有無によって金融所得の把握に差が生じていた
  3. 令和8年の法改正により、確定申告の有無にかかわらず金融所得情報を反映する仕組みが設けられた
  4. 令和11年1月の施行案が示されている
  5. 今後は税金だけでなく、医療保険料や医療費負担も考慮した判断が重要になる

年金生活では、毎年の税金や社会保険料の負担が家計に大きく影響します。

特に株式配当や投資信託の分配金などを受け取っている方は、今回の改正について早めに確認しておくことをおすすめします。

確定申告は、単に税金が戻ってくるかどうかだけで判断するものではありません。

ご自身の収入や資産運用の状況に合わせて、税金と社会保険料の両面から考えていくことが、これからの年金生活を守るうえで大切です。