「住宅取得等資金の贈与税非課税制度を使っていたから、相続税には関係ない」
実は、このような思い込みから、相続税申告で誤りが発生するケースがあります。
大阪国税局が公表した「誤りやすい事例(令和7年版)」でも取り上げられているのが、“住宅取得等資金の贈与”と“7年以内贈与加算”の関係です。
今回は、相続人の方が特に注意したいポイントを、できるだけ分かりやすく解説します。
■ 事例:住宅購入資金1,110万円を父から贈与
例えば、次のようなケースです。
子(乙)は、父(甲)から令和6年に住宅購入資金として1,110万円の贈与を受けました。
その際、
・住宅取得等資金の非課税制度:1,000万円
・暦年贈与の基礎控除:110万円
を使って、贈与税はゼロとなっていました。
その後、父が令和9年に亡くなり、相続税申告を行うことになります。
ここで、
「贈与税がかかっていないのだから、相続税にも関係ないだろう」
として、相続開始前7年以内の贈与加算をしなかった――
これが“誤り”です。
■ なぜ110万円だけ加算されるのか?
ポイントは、
「非課税制度による非課税」と
「基礎控除による非課税」は、扱いが違う
という点です。
住宅取得等資金の特例で非課税となった1,000万円部分については、法律上、相続開始前7年以内の贈与加算の対象外とされています。
しかし、残りの110万円は、単なる“暦年課税の基礎控除”です。
この110万円については、
「7年以内贈与加算の対象外にする」
という規定がありません。
そのため、相続税申告では、この110万円を相続財産に加算する必要があります。
■ 「税金ゼロ=申告不要」ではない
相続税の実務では、
「贈与税が発生しなかった」
=
「相続税にも影響しない」
とは限りません。
特に最近は、相続開始前贈与の加算期間が「3年」から「7年」へ段階的に延長されているため、生前贈与の確認は以前より重要になっています。
過去の贈与契約書
贈与税申告書
住宅資金贈与の特例適用資料
などを整理しておかないと、相続発生時に見落としやすくなります。
■ 相続人が確認しておきたい3つのポイント
① 「非課税制度」と「基礎控除」を区別する
同じ“税金がかからない”でも、制度ごとに相続税での扱いが異なります。
② 生前贈与の履歴を一覧化しておく
相続開始前7年以内の贈与は、今後ますます重要になります。
③ 「昔の申告」を必ず見直す
住宅取得資金、教育資金、結婚子育て資金など、特例適用の有無を確認しましょう。
■ まとめ
今回の事例は、
「非課税だったから安心」
という思い込みが原因で起こりやすい典型例です。
特例による非課税部分と、基礎控除部分では、相続税上の扱いが異なる場合があります。
相続税は、“過去の贈与”とのつながりを確認しながら進める税目です。
特に住宅取得資金の贈与を受けたことがある方は、早めに資料整理と専門家確認をしておくことをおすすめします。