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令和8年熊本地震で相続放棄の期限が延長?「熟慮期間」の特例を解説

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2026.09.09

相続が発生したとき、財産だけでなく「借金も相続することになるのか」と心配になることがあります。

相続人は、亡くなった方の財産や債務を確認したうえで、

・そのまま相続する
・相続放棄をする
・限定承認をする

といった選択をすることになります。

特に注意したいのが、相続放棄や限定承認には原則として3か月という期限があることです。

この3か月の期間は「熟慮期間」と呼ばれています。

令和8年7月28日に発生した令和8年熊本地震では、被災された方について、この熟慮期間を延長する特例が設けられました。

今回は、相続人の方に向けて、どのような人が対象になるのか、いつまで延長されるのかをわかりやすく解説します。

1.令和8年熊本地震で相続放棄の期限に特例

まず押さえておきたいのが、今回の特例です。

令和8年熊本地震を受けて、一定の条件を満たす相続人について、相続放棄や限定承認をするための「熟慮期間」が延長されています。

通常、相続放棄などには3か月という期間があります。

しかし、今回の特例の対象となる方については、熟慮期間が令和9年(2027年)3月31日まで延長されています。

「3か月の期限が迫っているけれど、被災していて相続の判断どころではない」という方を救済するための措置です。

2.そもそも「熟慮期間」とは?

相続が発生すると、相続人は亡くなった方の財産や借金などを調べたうえで、相続するかどうかを判断する必要があります。

相続には、大きく分けて次の3つの選択肢があります。

① 単純承認

財産も借金などの債務も含めて、原則としてすべて相続します。

② 相続放棄

相続人としての立場を放棄し、原則として財産も債務も相続しません。

③ 限定承認

相続によって得た財産の範囲内で、亡くなった方の債務などを負担する方法です。

相続放棄や限定承認をする場合には、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。

この3か月が「熟慮期間」です。

3.熟慮期間はいつから始まる?

「相続放棄は3か月以内」と聞くと、「亡くなった日から必ず3か月」と考える方も多いかもしれません。

しかし、法律上は単純に死亡日だけで決まるわけではありません。

原則として、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です。

そのため、実際のケースでは、被相続人との関係や死亡を知った時期などを確認する必要があります。

また、相続財産や借金の調査に時間がかかる場合には、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間の伸長が認められることもあります。

相続放棄を検討している場合は、「まだ3か月ある」と思って先延ばしにするのではなく、できるだけ早く財産と債務を確認することが大切です。

4.熊本地震の特例で期限が令和9年3月31日まで延長

今回の令和8年熊本地震では、一定の相続人について熟慮期間が延長される特例が設けられました。

ポイントは、令和8年7月28日の地震発生日に、相続人が災害救助法の適用を受けた対象区域に住所を有していたことです。

この条件を満たす方については、相続放棄や限定承認に関する熟慮期間が、令和9年3月31日まで延長されます。

被災によって住居や仕事、生活基盤に大きな影響を受けている中では、通常どおり相続財産を調査して判断することが難しい場合があります。

今回の特例は、そのような事情を考慮したものといえます。

5.延長の対象になるのはどのような相続人?

ここで非常に重要なのが、「熊本地震の被災地に関係していれば、誰でも対象」というわけではないことです。

特例の対象となるのは、地震が発生した令和8年7月28日に、災害救助法の適用を受けた対象区域に住所を有していた相続人です。

つまり、

「被相続人が熊本県に住んでいた」

というだけで、相続人全員の熟慮期間が延長されるわけではありません。

相続人本人が対象となる住所要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。

6.対象区域はどこ?

令和8年熊本地震に関する今回の特例では、災害救助法の適用を受けた自治体が対象となります。

対象区域には、熊本市、八代市、氷川町、西原村など、10市10町1村が含まれます。

ただし、対象区域については最新の公表情報を確認することが重要です。

「熊本県内だから対象」と一括りに考えるのではなく、実際にどの自治体が対象になっているのかを確認しましょう。

7.「住所」は住民票だけで判断されるとは限らない

「自分は対象区域に住所があったのだろうか?」

ここも気になるところです。

住所については、単純に住民票の所在地だけを見て判断されるとは限りません。

勤務証明書や公共料金の支払いに関する記録など、実際の生活状況を確認できる資料に基づいて判断される場合があります。

たとえば、仕事の都合などで住民票とは異なる場所で生活していた場合などには、形式的な住所だけでは実態を判断できないことがあります。

「住民票が違うから絶対に対象外」と自己判断せず、個別の事情がある場合には確認することをおすすめします。

8.相続人の一人が対象でも、全員の期限が延長されるわけではない

今回の特例で、特に注意していただきたいポイントです。

たとえば、相続人が、

・配偶者
・長男
・次男

の3人いたとします。

このうち長男だけが、令和8年7月28日時点で対象区域に住所を有していたとします。

この場合、長男については特例の対象となっても、配偶者や次男まで自動的に熟慮期間が延長されるわけではありません。

あくまでも、特例の要件を満たす相続人ごとに判断されます。

相続人が複数いる場合には、一人ひとりについて対象になるかを確認する必要があります。

9.相続放棄を迷ったら、まず「財産」と「借金」を確認

相続放棄を検討するときに重要なのは、亡くなった方にどのような財産や債務があったのかを把握することです。

たとえば、

・預貯金
・不動産
・生命保険
・株式などの有価証券
・借入金
・未払いの税金
・保証債務

などを確認します。

特に借金については、本人しか把握していなかったものが後から判明するケースもあります。

被災によって資料や通帳などが失われている場合は、通常よりも調査に時間がかかることがあります。

だからこそ、今回の特例の対象となる方も、「期限が延びたからゆっくり考えればいい」と考えるのではなく、できるだけ早く相続財産の調査を始めることをおすすめします。

10.期限が気になる場合は早めに専門家へ相談

相続放棄は、「借金がありそうだから放棄すればいい」というほど単純ではありません。

財産の内容によっては、相続放棄をすることで失う権利がある場合もあります。

また、相続放棄そのものの手続きは家庭裁判所で行います。

税理士は相続財産や相続税についての確認、財産全体の整理などをサポートできますが、相続放棄の具体的な手続きについては、必要に応じて家庭裁判所や弁護士・司法書士などの専門家にも相談することが大切です。

特に「3か月の期限が近い」「借金があるかもしれない」「被災して資料が十分に残っていない」という場合は、早めの相談をおすすめします。

まとめ

令和8年7月28日に発生した熊本地震では、被災された方を対象として、相続放棄や限定承認に関する「熟慮期間」を延長する特例が設けられています。

一定の要件を満たす相続人については、熟慮期間が令和9年3月31日まで延長されます。

ただし、注意したいのは、

「被相続人が被災地に住んでいたから、相続人全員の期限が延長される」わけではない

ということです。

令和8年7月28日時点で、相続人本人が災害救助法の適用対象区域に住所を有していたかどうかなど、要件を確認する必要があります。

また、相続人が複数いる場合、一部の相続人だけが特例の対象になることもあります。

相続放棄をするかどうかを判断するためには、財産だけでなく借金などの債務も含めて、できるだけ早く全体像を把握することが大切です。

今回の地震によって相続関係の資料を失ったり、財産調査が難しくなったりしている方もいらっしゃると思います。

「3か月の期限が迫っているけれど、まだ相続財産を調べきれていない」

「自分は熟慮期間延長の対象になるのかわからない」

という場合には、自己判断で期限を過ぎてしまわないよう、早めに専門家へ確認することをおすすめします。

相続では、期限を知っておくことが、その後の選択肢を守ることにつながります。

※本記事は、令和8年熊本地震に伴う熟慮期間の特例について、一般的な内容を解説したものです。実際に特例の対象となるか、熟慮期間がいつまでとなるかについては、相続人の住所、相続開始を知った時期、対象区域などの個別事情によって判断が必要です。相続放棄・限定承認を検討している場合は、期限を意識して早めに家庭裁判所や専門家へご確認ください。