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自筆証書遺言書保管制度とは?法務局での保管方法と相続人が確認すべきポイント

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2026.08.18

「遺言書を書いたけれど、自宅で保管していて大丈夫だろうか?」

「自分が亡くなった後、家族が遺言書を見つけられなかったらどうしよう?」

そんな不安を感じている方に知っていただきたいのが、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」です。

この制度を利用すると、自分で作成した遺言書を法務局で保管してもらうことができます。

自宅の引き出しなどで保管する場合と比べて、紛失や改ざん、相続人に発見されないといったリスクを抑えられます。

さらに、法務局に保管された遺言書については、原則として家庭裁判所での「検認」も不要です。

この記事では、相続人の立場からも役立つように、自筆証書遺言書保管制度のメリット、手続き、注意点、そして2026年に成立した「保管証書遺言」について、税理士の視点からわかりやすく解説します。

1.自筆証書遺言書保管制度とは?

自筆証書遺言書保管制度とは、自分で作成した遺言書を法務局の「遺言書保管所」で保管してもらう制度です。

これまで自筆証書遺言は、自宅の金庫や机の引き出しなどで保管されるケースが一般的でした。

しかし、自宅で保管すると、

・遺言書を紛失してしまう
・遺言書の存在を家族が知らない
・相続人が見つけられない
・誰かに書き換えられてしまう

といった問題が起こる可能性があります。

自筆証書遺言書保管制度は、こうした「遺言書の保管」に関する問題を解消するために設けられた制度です。

法務局では遺言書の原本と画像データを保管し、長期間にわたって管理します。法務省の案内では、原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間保管されます。

「せっかく遺言書を作ったのに、家族が見つけられない」という事態を防ぐための仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

2.自筆証書遺言書保管制度のメリット

この制度には、大きく4つのメリットがあります。

メリット1:遺言書の紛失・改ざんを防げる

法務局が遺言書を保管するため、自宅で保管する場合のような紛失や改ざんのリスクを抑えることができます。

相続では、「遺言書があるはずなのに見つからない」という問題が起こると、手続きが大きく滞る可能性があります。

法務局に保管しておけば、遺言書そのものを安全に管理できます。

メリット2:家庭裁判所の検認が不要

通常の自筆証書遺言では、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります。

一方、法務局に保管された自筆証書遺言については、検認が不要です。これにより、相続開始後の手続きを進めやすくなります。

メリット3:費用を抑えやすい

保管申請の手数料は、遺言書1通につき3,900円です。

公正証書遺言とは費用体系が異なるため、「できるだけ費用を抑えながら、遺言書を安全に保管したい」という方にとって、一つの選択肢になります。

メリット4:形式面のチェックを受けられる

保管申請の際には、法務局職員が遺言書について、法律で定められた方式に沿っているかという外形的な確認を行います。

そのため、方式上の不備によって遺言書が無効となるリスクを減らすことができます。

ただし、ここは非常に重要なポイントです。

法務局が確認してくれるからといって、「遺言の内容まで問題ない」と保証されるわけではありません。

3.自筆証書遺言を法務局に預けるための条件と書き方

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、遺言書は法律上の要件だけでなく、保管制度独自の様式にも従う必要があります。

例えば、制度上は、

・A4サイズ
・模様や彩色等のない用紙
・所定の余白を確保
・片面のみ記載
・ページ番号を記載
・ホチキス等で綴じない

といったルールがあります。

また、自筆証書遺言では、遺言の全文、日付、氏名などについて法律上のルールがあります。

ここで注意したいのが、「法務局に持っていけば、遺言書の内容を専門家としてアドバイスしてくれる」というわけではないことです。

法務局での確認は、あくまで方式についての外形的な確認です。

例えば、

「長男に自宅を相続させる」

と書いたとしても、その内容が家族関係や遺留分、相続税の観点から最適なのかまで判断してくれるわけではありません。

4.自筆証書遺言書保管制度の申請手順

実際に法務局へ遺言書を預ける場合は、一般的に次のような流れになります。

STEP1 遺言書を作成する

まず、自筆証書遺言を作成します。

制度独自の様式もあるため、作成前に法務省の案内を確認しておくと安心です。

STEP2 遺言書保管所を決める

どこの法務局でも自由に保管申請できるわけではありません。

原則として、

・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地

のいずれかを管轄する遺言書保管所が申請先となります。

STEP3 保管申請書を準備する

所定の保管申請書を準備します。

STEP4 予約する

遺言書保管制度の手続きは予約制となっています。

法務局によってはオンラインで予約できるほか、窓口や電話による予約にも対応しています。

STEP5 本人が法務局へ行く

保管申請は、原則として遺言者本人が法務局へ出向いて行います。

一般的には、

・遺言書
・保管申請書
・住民票の写し等
・顔写真付きの本人確認書類
・手数料3,900円

などを準備します。

STEP6 保管証を受け取る

手続きが終わると、保管証が交付されます。

保管証には、遺言者の氏名、生年月日、遺言書保管所の名称、保管番号などが記載されます。

保管証は、遺言書そのものではありません。

しかし、保管番号が分かると、その後の各種手続きがスムーズになります。

そのため、保管証は大切に保管しておきましょう。

5.どこの法務局でも保管できるわけではない

「法務局に預けられるなら、家の近くの法務局に持っていけばいい」と考えてしまいがちですが、そうとは限りません。

申請できる遺言書保管所には一定の条件があります。

基本的には、

「自分の住所地」

「自分の本籍地」

「自分が所有する不動産の所在地」

のいずれかを基準にして申請先を選びます。

特に、不動産を複数所有している方や、住所と本籍地が離れている方は、事前に申請先を確認しておきましょう。

6.相続が始まったら、相続人はどうやって遺言書を確認する?

ここは、相続人にとって特に重要なポイントです。

遺言者が亡くなった後、相続人等は法務局に保管されている遺言書について、閲覧や「遺言書情報証明書」の交付請求をすることができます。

つまり、

「遺言書を自宅で探し回らなければならない」

という状況を避けやすくなります。

また、制度には遺言書の存在を知らせる通知の仕組みもあります。

例えば、遺言者があらかじめ指定しておけば、遺言者の死亡が確認された場合に、指定した3名までの方に遺言書が保管されている旨を通知する制度があります。

ただし、遺言書を法務局に預けたからといって、家族に何も伝えなくてよいとは限りません。

「法務局に遺言書を預けています」

と家族に伝えておくだけでも、相続開始後の手続きをスムーズにする助けになります。

7.法務局に預けても「遺言の内容」まで安心とは限らない

ここが、遺言書を作成するときに最も注意していただきたいところです。

法務局は遺言書の方式について外形的な確認を行います。

しかし、

「この財産の分け方なら家族が納得するか」

「遺留分の問題はないか」

「相続税の負担はどうなるか」

「不動産をこの相続人に渡して問題ないか」

といった内容まで、法務局が個別に相談に乗ってくれるわけではありません。

例えば、相続財産の大半が自宅不動産なのに、

「長男に自宅を相続させる」

とだけ決めてしまうと、他の相続人との関係で問題が生じることがあります。

また、相続税が発生するご家庭では、財産の分け方によって税負担やその後の手続きが変わることもあります。

そのため、遺言書は「形式的に有効か」だけでなく、「実際に相続が発生したときに困らない内容か」という視点で考えることが大切です。

8.自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶ?

遺言書を作る場合、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがよいのでしょうか。

大まかに整理すると、次のような違いがあります。

自筆証書遺言 法務局保管の自筆証書遺言 公正証書遺言
作成 原則本人が作成 原則本人が作成 公証人が関与
保管 自分で保管 法務局で保管 公証役場で保管
検認 必要 不要 不要
保管費用 なし 1通3,900円 財産額等に応じた手数料
内容への専門家関与 原則なし 法務局は内容相談を行わない 公証人が関与

法務省の比較資料でも、自筆証書遺言書保管制度は1件3,900円で、検認が不要とされています。公正証書遺言では公証人が関与します。

どちらが優れているというより、

「どの程度、自分で準備できるのか」

「財産や家族関係が複雑なのか」

「遺言の内容について専門家の確認を受けたいのか」

などによって選択することが大切です。

9.2026年成立の「保管証書遺言」とは?デジタル遺言の今後

2026年は、遺言制度に大きな動きがありました。

2026年6月17日、遺言制度の見直しなどを含む改正法が成立し、6月24日に公布されました。

この改正では、電子データ等で作成した遺言を法務局で保管する「保管証書遺言」が創設されます。

現在の自筆証書遺言では、基本的に紙の遺言書を作成する必要があります。

これに対して、将来的にはパソコンなどを利用して作成した遺言を法務局で保管する仕組みが導入されることになります。

ただし、2026年8月現在、この制度はまだ施行されていません。

保管証書遺言の創設など、システムの改修を必要とする改正については、2026年6月24日の公布から3年を超えない範囲で政令により定める日が施行日とされています。

したがって、

「もうパソコンで作った遺言を法務局に預けられる」

というわけではありません。

今すぐ遺言書を準備する場合には、現在利用できる制度を前提に検討する必要があります。

今後、デジタル化によって遺言書の作成方法がさらに身近になることは期待できますが、最も大切なのは「どの方法で作るか」ではなく、「自分の意思が相続人にきちんと伝わる内容になっているか」です。

10.相続人を困らせないために、今から準備しておきたいこと

遺言書は、単に「財産を誰に渡すか」を書くためだけのものではありません。

遺言者が亡くなった後、残された家族ができるだけ迷わず相続手続きを進められるようにするためのものでもあります。

そのため、遺言書を作る前に、まず次のことを整理しておくことをおすすめします。

・預貯金や不動産など、自分の財産を把握する
・誰にどの財産を渡したいのかを整理する
・相続人を確認する
・家族間でトラブルになりそうな点を考える
・相続税が発生する可能性を確認する
・遺言書をどこに保管するか決める
・法務局に保管する場合は、家族にその事実を伝えておく

税理士として相続のご相談を受けていると、「遺言書を作っておけば安心」と考えている方は少なくありません。

もちろん、遺言書は非常に重要です。

ただ、本当に大切なのは「遺言書を作った」という事実だけではありません。

その遺言書によって、実際に相続が発生したとき、家族がスムーズに手続きを進められるのか。

そして、財産の分け方が相続税や家族関係まで含めて適切なのか。

ここまで考えて初めて、「相続人のための遺言書」になるのだと思います。

まとめ:遺言書は「保管方法」と「内容」の両方を考える

自筆証書遺言書保管制度は、自分で作成した遺言書を法務局で安全に保管してもらえる便利な制度です。

1通3,900円という比較的利用しやすい手数料で、紛失や改ざんのリスクを抑えられ、法務局に保管された遺言書は家庭裁判所での検認も不要です。

一方で、法務局が遺言の内容そのものについて相談に乗ってくれるわけではありません。

「誰に何を相続させるのか」

「相続税はどうなるのか」

「相続人同士でトラブルにならないか」

という部分は、別途しっかり検討する必要があります。

また、2026年にはデジタル形式の「保管証書遺言」を創設する法改正も成立しました。

今後は、遺言書の作成方法そのものがさらに変わっていく可能性があります。

しかし、どれだけ制度が便利になっても、「自分の意思を残された家族にどう伝えるか」という遺言書の本質は変わりません。

相続人にできるだけ負担をかけたくないと考えている方は、遺言書の作成だけでなく、財産の整理や相続税についても早めに確認しておくと安心です。

遺言書の内容や相続税について「この分け方で大丈夫だろうか」と迷う場合には、税理士をはじめ、弁護士、司法書士、行政書士など、それぞれの専門分野に応じて専門家へ相談することをおすすめします。

※本記事は2026年8月時点の公表情報をもとに作成しています。遺言制度は法改正等により変更される場合があります。実際に手続きをする際は、最新の法務省・法務局の案内をご確認ください。