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暦年課税の申告納税額が過去10年で初の4,000億円超|相続対策で注意したいこと

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2026.09.17

「毎年110万円までなら、贈与税はかからない」

相続対策について考えたことのある方なら、この「110万円」という数字を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

暦年課税には年間110万円の基礎控除があるため、相続対策として毎年少しずつ財産を贈与する方法は、これまでも広く利用されてきました。

ところが、国税庁が2026年5月に公表した資料を見ると、暦年課税について少し気になる変化が見えてきます。

今回は、2025年分の申告状況を確認しながら、相続人の方が暦年贈与を考える際に知っておきたいポイントを整理します。

1.暦年課税とは?

まず、暦年課税について簡単に確認しておきましょう。

暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額をもとに、贈与税を計算する制度です。

年間110万円の基礎控除があるため、1年間に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税の申告・納税は必要ありません。

反対に、110万円を超える贈与を受けた場合には、基礎控除を超える部分について贈与税を計算します。

2.2025年分の申告人員は2年連続で減少

国税庁の資料によると、2025年分に暦年課税を適用して申告した人は39.1万人でした。

これは2年連続の減少です。

内訳を見ると、

・申告納税額がある人:約31.7万人
・申告納税額がない人:約7.4万人

となっています。

つまり、暦年課税を利用して申告する人そのものは減少しています。

3.ところが、申告納税額は3年連続で増加

ここで注目したいのが「納税額」です。

2025年分の暦年課税による申告納税額は4,215億円。

3年連続の増加となり、直近10年間で初めて4,000億円を超えました。

さらに、1人当たりの申告納税額も133万円となり、こちらも3年連続で増加しています。

つまり、

「申告する人は減っている」

一方で、

「申告して納税する人の税額は増えている」

という状況になっています。

4.この数字から何が分かる?

では、なぜ申告する人が減っているのに、納税額は増えているのでしょうか。

ここは注意が必要です。

国税庁の統計は「何人が申告し、いくら納税したか」という結果を示すものです。

この数字だけから、「なぜ納税額が増えたのか」という原因を一つに決めることはできません。

ただ、相続対策を考える立場からすると、贈与税について「110万円」という数字だけを見て判断するのは危険だ、ということは改めて確認しておきたいところです。

5.「110万円までなら絶対に問題ない」わけではない

相続相談をしていると、

「毎年110万円ずつ子どもに贈与しています」

という話を聞くことがあります。

もちろん、年間110万円という基礎控除は重要な制度です。

しかし、

「110万円以下なら、どんな贈与でも問題ない」

という意味ではありません。

そもそも、本当に贈与が成立しているのかを確認する必要があります。

たとえば、親が子どもの名義の預金口座に毎年110万円を振り込んでいたとしても、子ども本人がその事実を知らず、預金を自由に管理できない状態であれば、単純に「毎年110万円を贈与した」と判断できるとは限りません。

贈与では「お金を移した」という事実だけでなく、贈与する側と受け取る側の意思や、実際の管理状況なども重要になります。

6.贈与税だけでなく「相続税」も一緒に考える

もう一つ重要なのが、贈与税と相続税を別々に考えないことです。

「贈与税がかからないから、相続対策として有効」

とは限りません。

相続対策として贈与を行うのであれば、

「贈与したことによって、将来の相続税にどのような影響があるのか」

まで考える必要があります。

近年は、相続税と贈与税を一体的に捉える観点から制度の見直しも行われています。

そのため、単に「毎年110万円」という金額だけを基準に贈与を続けるのではなく、相続まで含めて財産の移転を考えることが重要です。

7.「誰に贈与するか」も重要

相続対策として贈与を考えるとき、金額ばかりに目が向きがちです。

しかし、実際には、

「誰に贈与するのか」

という点も重要です。

子どもなのか、孫なのか。

相続人になる人なのか、ならない人なのか。

また、贈与する財産が現金なのか、不動産なのか、株式なのかによっても、検討すべき事項は変わってきます。

同じ1,000万円を贈与する場合でも、現金を贈与する場合と不動産を贈与する場合では、考えるべき税金や手続きが同じとは限りません。

8.「毎年110万円」を続ける前に確認したいこと

暦年贈与を利用して相続対策を行うのであれば、少なくとも次のような点は確認しておきたいところです。

・誰から誰への贈与なのか
・年間の贈与額はいくらなのか
・他の人からも贈与を受けていないか
・贈与の事実を受贈者が認識しているか
・贈与した財産を受贈者が実際に管理しているか
・将来の相続税にどのような影響があるか
・贈与することで本人の生活資金が不足しないか

特に最後の点は忘れないようにしたいところです。

相続税を減らすことだけを優先してしまうと、贈与した本人の老後の生活資金が足りなくなるという、本末転倒な事態にもなりかねません。

9.相続対策は「税金を減らすこと」だけではない

相続対策というと、

「どうすれば相続税を少なくできるか」

という話になりがちです。

もちろん税負担を考えることは大切です。

しかし、本来の相続対策はそれだけではありません。

ご本人が安心して老後を過ごせること。

ご家族が納得できる形で財産を引き継ぐこと。

相続が発生した後に、家族同士で争いにならないようにしておくこと。

こうしたことも含めて考える必要があります。

税金だけを見て財産を動かすのではなく、「自分の財産をどう残したいのか」というところから考えることが大切です。

10.まとめ|「110万円」だけで相続対策を判断しない

2025年分の暦年課税については、申告人員が39.1万人となり、2年連続で減少しました。

一方、申告納税額は4,215億円となり、3年連続で増加。

直近10年間で初めて4,000億円を超えました。

この数字だけから、贈与税の増加理由を断定することはできません。

しかし、相続対策を考えている方にとっては、贈与税について改めて確認するきっかけになる数字ではないでしょうか。

特に注意したいのは、

「年間110万円までなら何をしても大丈夫」

という考え方です。

110万円はあくまで暦年課税の基礎控除です。

贈与の成立、誰に贈与するのか、財産の種類、過去の贈与、そして将来の相続まで含めて考える必要があります。

相続対策は、早く始めればよいというものでも、税金が少なくなればよいというものでもありません。

まずは現在の財産状況を整理し、

「自分は何のために贈与をするのか」

を明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。

税金の計算は、その次の段階です。

【参考資料】

国税庁
「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」
2026年5月公表

※本記事は、国税庁公表資料等をもとに一般的な制度について解説したものです。個別の贈与については、贈与者・受贈者の関係、財産の種類、贈与の時期、過去の贈与、相続との関係などによって取扱いが異なる場合があります。