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7. 専門家の選び方と安心して相談できる体制づくり

スタッフブログ

2025.09.24

公立学校の教職員のための相続がわかるブログ
このブログは拙著「公立学校の教職員のための相続がわかる本」
→ https://www.amazon.co.jp/dp/B0D5WFBG3S
をブログ用に再構成したものです。

相続に関しては、公立学校の教職員の皆さまも例外なく、法的・税務的手続きが複雑化しやすい領域です。多忙な毎日のなかで相続に直面すると、誰に相談すれば良いのか分からず、かえってトラブルに発展したり、手続きが遅延してしまうケースが少なくありません。本章では、税理士としてこれまで数多くの教職員家庭の相続対応を経験してきた視点を踏まえ、「専門家の役割と相談先の選び方」、さらに「実際の相談事例」を交えながら、ご安心いただける体制の築き方をご紹介します。

7-1 相続関連専門家(弁護士、司法書士、税理士、行政書士)の役割
相続に関わる専門家は多種多様ですが、それぞれの役割を理解することが、適切な相談およびスムーズな解決につながります。

弁護士は、法律全般における最も広範な専門家であり、特に相続争い(いわゆる「争族」)が発生している場合に必要不可欠です。たとえば、遺産分割に関する紛争、遺留分侵害に基づく減殺請求、相続放棄や限定承認の手続きサポート、遺言無効確認訴訟などの法的代理人としての役割を担います。相続紛争時に交渉や調停、訴訟までワンストップで対応できる点が強みです。ただし、登記手続きや税務申告などは専門外のため、それらは適宜他専門家と連携します。

司法書士は、不動産の相続登記や名義変更のエキスパートです。また、相続放棄や遺産分割協議書の作成において法的書類の代理作成、戸籍収集なども得意としています。ただし、相続税の申告業務は行えませんし、争い事に対する代理権もありません。教職員の多くが所有される不動産の適切な名義変更を迅速に行いたい場合は、司法書士が適切です。

税理士は、相続税申告をはじめとする税務全般の専門家です。相続財産の評価(特に不動産の評価)、遺産分割に関わる税制の解釈、生前贈与や相続税対策の提案、準確定申告(亡くなった年の所得税申告)など、税務的判断が不可欠な分野での役割は非常に大きいです。特に教職員の相続は、不動産評価や兼業状況の整理など専門的な知見が必要なため、相続税申告に強い税理士の選択は重要です。

行政書士は、官公庁提出の書類作成代理や遺産分割協議書作成、相続関係説明図の作成等を担います。司法書士ほどの登記関係の権限は持ちませんが、比較的費用が抑えられる点で負担軽減を図りたいときに適しています。税務申告は行えません。相続人同士の争いが少なく、相続財産の規模が小さい場合の相談先として選ばれます。

教職員の皆さまは、多忙や専門知識不足で「一体何から始めたらいいのか」という戸惑いが特に大きいため、上記の専門家の役割を理解し、適材適所の相談先を選択することが円滑な相続には欠かせません。

7-2 「誰に何を相談すればよい?」お悩み別相談窓口ガイド
教職員の相続に関する悩みは多岐にわたるため、状況と問題に応じて適切な専門家を選ぶ目安をご紹介します。

相続人間の争いがある、または予想される場合
→ 弁護士に相談が最適です。遺産分割協議の代理交渉や調停申立て、遺留分侵害請求の対応も可能。精神的な安心感も確保できます。

相続税申告が必要で、財産の専門的評価や節税対策を検討したい場合
→ 相続税に強い税理士に相談。不動産評価や生命保険の非課税枠活用など、税務メリット最大化のアドバイスを得られます。

遺産に不動産が含まれ、名義変更や相続登記をスムーズに行いたい場合
→ 司法書士へ依頼。遺産分割協議書作成も依頼可能。登記申請は司法書士の専管業務です。

争いはなく、相続財産が比較的小規模(現金のみなど)で、手続書類作成を安価に進めたい場合
→ 行政書士に相談。身近な書類作成代理が依頼でき、負担軽減につながります。

専門家選びがわからず、困っている場合
→ まずは税理士事務所等に相談することをおすすめします。相続全般を取り扱う税理士は提携専門家と連携し、具体的な課題に応じた最適な専門家を紹介してくれることが多いです。

教職員の皆さんは多忙ゆえに、まずは気軽に相談できる先生(税理士や司法書士)へ連絡し、状況を説明することから始めると安心です。適切な窓口を案内してもらえれば、手間も少なく、一定の信頼感も得られます。

7-3 教職員の相続で実際によくある相談内容とその解決事例
実際に教職員の方々からよく伺う相談内容と、その中から特に代表的な事例を紹介します。

事例1:名義変更手続きの遅れによる督促状が届いたケース
公立学校勤務のSさんは、父親の死後すぐに多忙でほったらかしにしていたところ、不動産の名義変更が遅れ、固定資産税の督促状が届き慌てて相談。司法書士と連携して戸籍取得、遺産分割協議書を作成して登記を進めた結果、督促は収まり、税務申告も税理士の支援で期限内提出ができました。

事例2:相続税申告の必要性が不明瞭で困惑した場合
妻が亡くなり、夫で教職員のTさんは、財産が多いか少ないかわからず、相続税申告が必要か否か困っていました。税理士に相談の上、詳細な財産調査と負債控除の査定を実施。結果、基礎控除超過で申告が必要となりましたが、配偶者控除や小規模宅地の特例も活用し、安心して適正申告まで進められました。

事例3:遺産分割協議で兄弟間の意見が分かれたケース
母の死後、相続人となった3兄弟で話がまとまらず、争いが長引いたAさん。弁護士を介して調整と法的助言を受け、遺言書がない中でも円満に話し合いが進み、結果として全員が納得する遺産分割がなされました。

事例4:兼業による不動産賃貸業の相続評価が分かりにくいケース
夫婦とも教職員であるFさんのご家庭は父親が複数の貸家を所有していました。兼業許可の確認や事業規模、管理委託状況など整理が必要でしたが、税理士が不動産評価の専門知識を活用し、適切な評価と節税対策、申告手続を実現。兼業の落とし穴を事前に回避できました。

これらはほんの一例ですが、教職員は職務の多忙さや税務知識不足で相続手続きを後回しにしがちで、結果的に不利益を被ることが多いです。専門家に早期相談をすることで精神負担が軽減し、問題解決が加速することは繰り返し申し上げたいポイントです。

教職員の皆さまは、身近な専門家に相談することからスタートしつつ、必要に応じて弁護士、税理士、司法書士、行政書士のネットワークを活用してください。ご自身の多忙を考慮しつつ、安心できる相談体制を早期に築くことが、相続問題を円滑かつ負担少なく乗り越える最大の秘訣です。