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2. 夫婦ともに教職員家庭の相続対策~二次相続で損しないために~

スタッフブログ

2025.09.17

2-1 教職員カップルに多い資産・退職金・年金の相続事情
公立学校の教職員ご夫妻が直面する相続事情は、一般家庭とは異なる特徴があります。まず注目すべきは、安定的な給与収入と公的年金、さらに退職金や共済年金といった複合的な収入構造です。これらが理由で、夫婦ともに教職員である世帯は、経済基盤が比較的盤石である一方、相続財産が多くなりがちで、二次相続(配偶者の死亡時の相続)での税負担増加リスクが顕著です。

退職金は、「みなし退職金」として相続税の課税対象となり、その評価額は有価証券や不動産と異なり専門的な計算が必要です。このため、単純に預貯金や不動産の評価だけで相続対策を検討すると、不足する可能性があります。教職員はこれら特殊性を正しく理解しておく必要があります。

夫婦ともに教職員である場合、多くのケースで最初の相続(一次相続)は配偶者がほとんどの財産を引き継ぎます。これは配偶者税額軽減の特例により、配偶者が相続した一定額までは相続税がかからないため、結果的に一次相続での納税が軽減されます。しかし、この配偶者への集中相続は二次相続において大きな問題を生じさせます。二次相続では配偶者の相続人(子ども等)が広範囲に財産を引き継ぎ、相続税が一気に発生しやすくなるのです。特に不動産や退職金の評価が高い場合、この傾向は顕著です。

また、教職員ご夫妻は多忙であるため、一次相続の段階で財産分割の設計を防ぐことが後回しになることも多いです。遺言書の作成率も低く、相続税軽減策を検討せずに配偶者へ全財産を相続させてしまうため、結果的な税負担が増大します。税理士の視点からは、一次相続時点での財産評価や将来の相続税予測を綿密に行い、「二次相続を踏まえた財産分割の設計」が不可欠と指摘できます。

2-2 二次相続で損をしない「財産分割」の設計
一次相続で配偶者に全財産を相続させる方法は、一見節税効果が大きいように見えますが、その対策を怠ると二次相続で高額な相続税が発生しやすく、結果的に家庭全体の税負担が増えてしまいます。教職員夫婦に特によくあるケースとしては、配偶者が多くの不動産や退職金を取得し、その後配偶者の死亡により子どもが相続することで、二次相続の税負担が膨らむというものです。

そこで重要なのは、一次相続の段階で次のような財産分割の工夫をすることです。

財産分割の多様化
配偶者に全てを相続させるのではなく、子どもやほかの相続人にも適度に財産を分割しておくことで、二次相続の対象となる配偶者の財産を減らすことができる。たとえば、現金や有価証券の一部を子どもに相続させることで分散化を図るなどが考えられます。

生命保険の活用
生命保険の死亡保険金は非課税枠があり(500万円×法定相続人の数)、また相続税評価格とは別枠で扱われるため、相続税の分散や納税資金の準備に役立ちます。二次相続の負担を軽減するためにも、保険を巧みに組み込んだ設計が効果的です。

遺言書の作成
遺言書で「具体的な遺産分割の指示」を残すことで、一次と二次の相続の両方を見据えた計画的な分割が可能になります。ただし、公正証書遺言の使用が推奨され、相続開始後の揉め事防止にもなります。

贈与を併用した相続税節税
生前贈与(暦年課税や相続時精算課税制度の活用)を組み合わせ、配偶者の財産が過度に集中しないようにすることが有効です。特に、将来的な相続税の軽減に繋がるため、子どもたちへの分散は節税面で有効といえます。

これらの手法は単独で効果を発揮するのではなく、家庭の事情や財産状況に応じて複合的に検討し設計する必要があるため、税理士など専門家のシミュレーションや助言を活用し、慎重な計画を立てることが重要です。

2-3 専門家が解説、失敗しない相続シミュレーション事例
実際の相続場面では、教職員の方から「一次相続で配偶者に全財産を相続させたが、二次相続時に想定外の税負担が発生した」「遺言書がなく家族間で揉めた」といった相談をよく受けます。ここで具体的なシミュレーション事例を紹介し、なぜ計画的な財産分割が必要なのかを解説します。

【シミュレーション例】
A夫妻は双方とも公立教職員。財産総額は約1億5,000万円(不動産7,000万円、現金・預貯金5,000万円、退職金含む共済年金見込額1,000万円、ほか有価証券2,000万円)。子どもは2人。A夫妻は遺言書を作成せず、一次相続で全ての財産を配偶者Bに相続させました。

一次相続時
配偶者の税額軽減特例により、Bは相続税を支払いませんでした。

二次相続時
Bの死亡時に相続税申告が必要となり、全財産1億5,000万円が対象になるため、基礎控除の範囲を超えて相続税が発生。結果、子ども2人で約2,500万円の相続税納付が必要となりました。

【対策案シミュレーション】
専門家の提案で一次相続時に以下の対応を行いました。

遺言書による財産の分割(現金の一部を子どもに相続させる)
生命保険の利用で死亡保険金非課税枠を活用
生前贈与により財産を段階的に子どもへ移転
その結果、配偶者Bの相続財産が適度に減り、二次相続にかかる相続税は約1,000万円に軽減。全体の相続税負担が大幅に下がり、家族間の争いも未然に防ぐことができました。

このように、相続シミュレーションは将来の税負担を見越し、設計変更を提案できるため欠かせません。税理士は相続財産の適切な評価と過去のケース分析をもとに、具体的かつ現実的な最適解を提供します。教職員の多忙さを考慮し、専門家が早期に介入することで、二次相続による高額な納税リスクを抑制し、円滑な相続を実現できるのです。

以上の視点から、教職員カップルの相続は安易な全財産配偶者相続を避け、二次相続に備えた戦略的分割を専門家と共に検討することが重要であり、シミュレーションを活用した計画的対策によって、将来の財産と家族の安心を守ることが可能です。