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1. 公立学校教職員のための相続とは?~忙しい先生でも分かる基本ポイント~

スタッフブログ

2025.09.16

公立学校の教職員のための相続がわかるブログ
このブログは拙著「公立学校の教職員のための相続がわかる本」をブログ用に再構成したものです。

1-1 教職員に多い相続トラブルとその背景
公立学校の教職員の方々が相続の場面で直面しやすいトラブルは、社会全体の相続問題と共通する部分が多いものの、職業特性と生活環境が要因となり、特有の事情が絡み合っている点が特徴的です。まず挙げられるのは、相続手続きの遅延に起因する問題です。教員の多忙な勤務時間や年度末などの繁忙期は特に相続手続きが後回しになりがちで、たとえば公共料金の名義変更が遅れたり、不動産の名義変更が数年経過しても済んでいなかった例も見受けられます。これは自治体の条例にも抵触する可能性があり、罰則が科せられることもあるため注意が必要です。

また、遺言書の管理不備や発見の遅れによって遺産分割協議が難航し、遺産の分割内容を一度決めてもやり直しになるケースもあります。このようなトラブルは、精神的な負担を増やすだけでなく、相続税申告期限の短縮や放棄の申請期限を逸してしまう事態を引き起こします。教職員の方々は相続や税務の知識に疎いことが多く、その結果、相続税の特例や控除を活用し損ねることも少なくありません。子どもたちの未来や家族の絆を守るためにも、相続トラブルを未然に防ぎ、適切な対策を講じることが重要となります。

1-2 なぜ手続きが遅れる?教員ならではの注意点
教職員の方は職務上、時間の制約が大きいことが相続手続きの遅延に直結している点が大きな特徴です。授業準備や部活動、学年行事、保護者対応など多忙な毎日の中で、相続の相談や手続きに割ける時間を確保することが困難です。加えて、相続人が多数に及ぶ場合、家族間の意思疎通も難しく、話し合いの場が設けられにくい傾向にあります。

さらに、多くの教職員は公務員の安定性からお金や税金に対する意識が低くなりがちで、それが遺言書作成や相続税対策の後回しにつながります。実際に、遺言書を持っている教職員は少数派であり、何も準備せずに遺されたご家族がお金の問題に直面し、負担が重くなるケースが多々あります。

もう一つの注意点として、教員夫婦共に教職員であるケースが増えていることが挙げられます。こうした場合、相続は一度だけでは終わらず「二次相続」という二段階の相続が発生し、適切な財産分割や相続税対策をしないと、結果的に税負担が大きくなってしまう恐れがあります。忙しさのために気づくのが遅れることが多いので、早めに専門家に相談しシミュレーションを依頼することが大切です。

1-3 税理士が教える、「まず知っておくべき」相続手続き全体像
相続手続きは初めての方にはハードルが高く感じられるものですが、大まかな流れやポイントを押さえておくことで、準備や対応がスムーズになります。

まず、亡くなった方(被相続人)がいらっしゃる場合、相続が開始します。直後に行うべきことは「相続人の確定」と「遺言書の有無の確認」です。遺言書があればその内容に従って相続手続きが進み、なければ相続人全員による「遺産分割協議」が必要となります。この遺産分割協議書は、金融機関の相続手続きや不動産の名義変更に欠かせない重要な書類です。

次に、「相続放棄」や「限定承認」を選択できる期限に注意しましょう。財産に借金などの負債がある場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申請が必要です。この期間を過ぎると単純承認となり、負債も含めて相続することになります。

税金面では、亡くなった方の所得税の「準確定申告」が4ヶ月以内に必要です(これは相続税とは別の手続きです)。その後、相続税申告は10ヶ月以内に行う義務があります。ただし、全ての相続案件に相続税が課されるわけではなく、相続財産の合計が一定の基礎控除額を超えた場合のみ申告義務が生じます。

最後に、令和6年4月1日からは「相続登記の義務化」が施行され、相続で取得した不動産は3年以内に名義変更しなければ罰則対象になります。放置すると後の相続手続きがさらに複雑になることから、一刻も早い対応が求められます。

相続は想像以上に多くの手続きが連続しますが、事前に全体像を把握し、必要な書類を順序立てて準備することで、負担を軽減できます。特に公立学校の教職員の方々は時間的制約が大きいため、税理士など専門家への早めの相談をおすすめします。専門家は資産の評価や税務シミュレーション、手続きの代行など幅広くサポートしますので、困ったときは遠慮なく頼ってください。