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遺留分侵害額を請求されたら、そのまま控除して申告していませんか? 相続税申告で誤りやすい実務ポイント

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2026.03.31

相続の現場では、「配偶者から遺留分を請求されているので、その分は長男の取得財産から差し引いて申告すればよい」と考えてしまうケースがあります。ですが、相続税の申告実務では、その理解が誤りになることがあります。今回は、大阪国税局が公表した「誤りやすい事例」をもとに、遺留分侵害額の請求があった場合の正しい申告の考え方を、相続人の方にもわかりやすく整理します。

## よくある誤解
事例では、被相続人が「すべてを長男に相続させる」という公正証書遺言を残していました。

ところが、申告期限までに配偶者から遺留分侵害額の支払請求を受けたため、長男は「いずれ支払うのだから」と考え、配偶者の遺留分相当額を差し引いて相続税申告をしてしまいました。

一見すると自然な処理に見えますが、税務上はここに注意が必要です。

## 正しい取扱いは「まず遺言どおりに申告」
相続税では、申告期限までに遺留分侵害額として支払う金額がまだ確定していない場合、その請求は“なかったもの”として扱い、まずは遺言の内容に基づいて期限内申告を行う必要があります。

つまり、このケースでは長男が全部を取得した前提で申告するのが原則です。

ここが実務上とても大切な点です。相続人の感覚としては、「争いが起きている以上、最終的な着地点を見込んで申告したい」と思いがちです。しかし、税務は“未確定の話”を先回りして処理することを基本的に認めていません。申告時点で確定している事実に基づいて申告する、という姿勢が必要です。

## 金額が後で確定したらどうするのか
では、その後に遺留分侵害額として支払う金額が確定した場合はどうなるのでしょうか。

長男は、その確定を知った日の翌日から4か月以内であれば、更正の請求ができます。つまり、当初多く申告していた相続税について、正式な手続で見直しを求めることができます。

一方で、配偶者側は、遺留分侵害額が確定したことで新たに申告が必要になったり、すでに確定した税額に不足が出たりした場合には、期限後申告や修正申告を行うことになります。

このように、申告期限時点では一旦確定事実で申告し、その後の確定内容に応じて修正する、という二段階で考えることが重要です。

## 相続人が気をつけたい実務ポイント
遺留分の請求が出ると、感情面でも手続面でも混乱しやすくなります。ですが、相続税申告では「請求があったこと」と「金額が確定したこと」は別問題です。

特に注意したいのは次の点です。

・請求を受けただけでは、直ちに申告額へ反映できるとは限らない
・申告期限までに金額が未確定なら、原則どおりの期限内申告が必要
・後日確定したら、更正の請求や修正申告で調整する
・対応が遅れると、不要な税負担や手続負担につながる

## まとめ
遺留分侵害額の問題は、法律の話と税務の話が交差するため、相続人の方にとって特にわかりにくい論点です。

ですが、実務の基本は明確です。申告期限までに支払うべき金額が確定していないなら、まずは遺言内容に基づいて申告する。その後、確定した段階で必要な手続を取る。この順序を誤らないことが、結果として余計な混乱を防ぎます。

相続では、「もめているからまだ申告できない」と考えてしまう方も少なくありません。しかし、争いがあるときほど、税務は期限管理と手続の正確さが重要になります。相続人として不安を感じたら、早い段階で税務と法律の両面を確認しながら進めることが大切です。