
祖父の代から受け継いだ畑を「使わないままにしておくのはもったいない」と思う方は少なくありません。
とくに公務員の方の場合、「自分で農業をする予定もないし、自宅用の駐車場にしたい」と考えるケースも多いでしょう。
しかし、農地は法律で厳格に保護されており、勝手に転用すると罰則の対象にもなりかねません。
今回は、市街化区域内の農地を駐車場にする際の手続きと注意点を、専門家の視点から整理します。
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## 1.農地を駐車場にするには「農地転用」の手続きが必要
農地法では、農業以外の用途で農地を使うことを「転用」と呼び、原則として許可や届出が必要です。
とくに、**市街化区域内の農地**を自己使用目的で駐車場などにする場合には、
「農地法第4条の届出」を農業委員会に提出しなければなりません。
この届出を行わずに整地や舗装を始めてしまうと、**無断転用(違法行為)**として罰則や原状回復命令の対象となる可能性があります。
「自分の土地だから自由に使える」と思いがちですが、農地だけは例外です。
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## 2.手続きの流れと必要書類
まずは、農地の所在する自治体の農業委員会に**事前相談**を行いましょう。
転用が可能かどうか、必要書類、地目変更の流れなどを確認します。
### 主な手続きの流れ
1. 農業委員会へ事前相談
2. 農地転用届出書と必要書類の提出
3. 届出受理通知書の交付(約1〜2週間)
4. 届出受理後、「地目変更登記(雑種地など)」を申請
### 主な提出書類
– 農地転用届出書
– 登記事項証明書(原本)
– 公図・案内図
– 利用計画図や誓約書(自治体による)
地域によって様式や書類が異なるため、必ず自治体で確認してください。
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## 3.公務員ならではの留意点
公務員の方は「兼業制限」の規定に注意が必要です。
自用の駐車場として利用する場合は問題ありませんが、他人に貸して駐車場収入を得る場合は、
副業(不動産所得)としての扱いになるため、勤務先への届出や許可が必要なケースもあります。
公務員だからこそ、「転用手続き」と「副業規定」の両方をチェックすることが大切です。
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## 4.地目変更と固定資産税への影響
農地を駐車場として利用する場合、地目を「雑種地」などに変更する必要がある場合があります。
これを怠ると、固定資産税や都市計画税の評価が実態と合わなくなることがあります。
地目変更は法務局での登記手続きが必要です。
また、駐車場化によって土地の利用価値が上がると、**翌年度以降の固定資産税が上昇**することも想定しておきましょう。
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## 5.まとめ:農地転用は「届出」だけで安心しない
農地の転用には、法律・登記・税務の3つの観点が関係します。
「届出だけで終わり」と思わず、地目変更や課税への影響、公務員としての副業規定までを見据えることが大切です。
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### 💬小林匠コメント
農地の相続は“使わない土地問題”の典型例です。
駐車場にすれば有効活用になりますが、**転用のルールと税務・公務員規定の三重チェック**が不可欠。
「申請すれば済む話」ではなく、「将来の相続・管理・税金まで見据えた判断」が重要です。
迷ったときは、農業委員会と税理士・行政書士の両方に相談することをおすすめします。