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認知症の疑いがあっても「遺言」は作れる?〜高齢の親を持つ公務員が今こそ知っておきたい備え〜

スタッフブログ

2025.10.22

もしものとき、家族がもめないために──
高齢の親が認知症かもしれない。でもまだ遺言は間に合う?そう思ったことはありませんか?
今回は、親と同居する公務員の方からのご相談をもとに、「認知症と遺言の有効性」について、わかりやすく解説します。

【親が認知症っぽい…でも遺言は作れるの?】
結論から言えば、「**遺言を作る時点で意思能力(遺言能力)があれば、有効な遺言は作成可能**」です。

民法では、本人が自分の財産状況や相続関係を理解し、その上で誰に何を相続させるか合理的に判断できる力があれば、遺言は有効とされています(民法961条、963条、3条の2)。

つまり、「認知症と診断された=遺言ができない」というわけではありません。
重要なのは、「**遺言作成時に、本人の判断能力が保たれていたかどうか**」です。

【判断材料は“内容の合理性”と“動機”】
例えば今回の相談のように──
– 同居している子に、生活拠点でもある家を相続させたい
– 他の兄弟とは関係が悪く、分割協議は避けたい

こうした**現実的で合理的な動機**があれば、遺言能力は肯定されやすいです。
また、内容も単純であればあるほど、本人の意思と認められやすくなります。

【それでも「早めの遺言作成」をおすすめする理由】
認知症は進行性です。今はまだしっかり話せていても、将来的には意思能力を失うリスクが高まります。

だからこそ、**できるだけ早い段階での遺言作成**がポイントになります。

特におすすめなのが、「**公正証書遺言**」。
公証人が本人の意思確認を行い、証人2名の立会いのもとで作成されるため、
・本人の意思能力が第三者によって確認される
・原本が公証役場に保管される
・家庭裁判所の検認が不要
というメリットがあります。

【トラブル回避のための+αの工夫】
ただし、遺言が有効であっても「遺留分(法定相続人が最低限もらえる権利)」をめぐって兄弟間で争いになる可能性もゼロではありません。

そこで、以下のような工夫も有効です:
– 専門家(司法書士・行政書士・弁護士など)の関与
– 財産状況や家族関係の整理
– **「付言事項(メッセージ)」を加えて感謝や背景を伝える**

感情面での納得感があれば、法的な争いも避けやすくなります。

【まとめ】
✅ 認知症の疑いがあっても、意思能力があれば遺言は可能
✅ ただし進行性のため、できるだけ早く公正証書遺言を作ることが重要
✅ 専門家のサポートや付言事項の活用で、より安心・円滑な相続へ

🏠【高齢の親と同居する公務員の皆さまへ】
今は「何となく不安」でも、そのままにしておくと、
将来の相続が“争族”に変わるリスクもあります。
元気なうちの準備こそが、家族への最大の思いやりかもしれません。