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被相続人名義の預金を使ってしまうと相続税に影響しますか?

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2025.12.12

被相続人名義の預金を使ってしまうと相続税に影響する?知らずにやりがちな注意点を解説

相続が発生した直後、葬儀費用や当面の生活費の支払いのために、被相続人名義の預金を使ってよいのか悩む方は非常に多くいます。金融機関が口座を凍結する前に引き出してしまった、あるいは暗証番号を知っていたために引き出して使ってしまったというケースも少なくありません。「使ってしまったら相続税で不利になるのでは?」「申告で問題になるのでは?」と不安になるのも当然です。この記事では、被相続人名義の預金を使ってしまった場合の相続税への影響について、制度の基本から実務上の注意点までをわかりやすく解説します。

結論:使っていても原則として相続税の課税対象になる

結論から言うと、被相続人が亡くなった時点で存在していた預金は、たとえ相続人がその後に使ってしまっていても、原則として相続税の課税対象になります。相続税は「亡くなった時点で被相続人が持っていた財産」を基準に計算されるため、その後に引き出したかどうか、残高が減っているかどうかは基本的に関係ありません。つまり、使ってしまったから相続税がかからなくなる、あるいは減るということはありません。

なぜ使っても相続税がかかるのか

相続税の考え方では、相続開始時点、つまり被相続人の死亡時点での財産状況が基準になります。被相続人名義の預金は、その時点では被相続人の財産であり、相続人全員の共有財産になると考えられます。相続開始後に誰か一人が引き出して使ったとしても、それは「相続財産を分け合う前に一部を先に取得した」と評価されるだけです。

そのため、相続税申告では、死亡日時点の預金残高を相続財産として計上しなければなりません。引き出して使った金額も含めて申告する必要があり、申告しないと申告漏れとして税務署から指摘される可能性があります。

よくある誤解:生活費や葬儀費用なら申告しなくていい?

よくある誤解として、「葬儀費用や当面の生活費に使ったお金だから、相続税の対象にならない」というものがあります。確かに、葬儀費用そのものは相続税の計算上、債務控除として差し引くことができます。しかし、これは「預金が相続財産でなくなる」という意味ではありません。

一度は相続財産として預金全額を計上し、そのうえで、支払った葬儀費用を債務控除として差し引く、という形になります。預金を使ったから最初から申告しなくていい、という扱いにはならない点に注意が必要です。

実務で特に注意したいポイント

実務上注意すべきなのは、「誰が、いくら使ったのか」をきちんと整理しておくことです。相続人の一人が被相続人名義の預金を使っていた場合、他の相続人との間でトラブルになることがあります。また、相続税申告の際にも、そのお金がどのような目的で使われたのか説明を求められることがあります。

特に注意が必要なのは、使ったお金を申告書に一切反映させないケースです。税務署は金融機関への照会により、死亡時点の預金残高を把握できます。「もう残っていないから大丈夫」と考えるのは非常に危険です。また、相続人の一人が多額に引き出している場合、遺産分割の調整や特別受益として問題になることもあります。

専門家(税理士・行政書士)ができるサポート

相続税の申告では、預金の扱いだけでなく、遺産分割や債務控除、名義預金の有無など、判断が難しいポイントが多くあります。被相続人名義の預金をすでに使ってしまっている場合でも、専門家に相談することで、適切な申告方法や他の相続人との調整方法について具体的なアドバイスを受けることができます。

税理士であれば相続税申告全体を見据えた対応が可能ですし、行政書士であれば遺産分割協議書の作成など、手続面を含めたサポートが可能です。早めに相談することで、不要なトラブルや追徴課税のリスクを減らすことができます。

まとめ:使ってしまっても正しく申告すれば問題ない

被相続人名義の預金を使ってしまった場合でも、それ自体が直ちに違法になるわけではありません。ただし、相続税の計算上は、死亡時点の預金残高を正しく申告する必要があります。「使ったから申告しなくていい」という考えは大きな誤解です。すでに使ってしまった場合こそ、内容を整理し、必要に応じて専門家に相談したうえで、正確な相続税申告を行うことが重要です。不安がある場合は、早めの相談をおすすめします。