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「学資金の非課税」判断基準とは?〜司法修習生給付金裁判から読み解く税務の核心〜

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2025.06.13

人材育成投資が経営戦略として注目される中、企業が提供する「学資金」がどこまで非課税で処理できるのか——。今回取り上げるのは、司法修習生に支給された基本給付金が学資金として非課税扱いできるか否かが争われた裁判事例です。この裁判の行方から、実務上どこに注意が必要なのか、経営者目線で解説します。

## 「基本給付金は学資金か?」裁判の概要

大阪地裁で争われたのは、司法修習生が受け取った基本給付金(生活費支援)が「学資金」として非課税に当たるかどうか。原告は非課税を主張しましたが、最終的に最高裁まで争われ、「生活費に充てられる使途に限定がない給付は学資金に当たらない」とされました。

この判断には「学資金は学術指導の対価に限定されていること」が明確に求められています。

## 学資金の非課税規定とは

所得税法第9条1項15号に定められる学資金の非課税。この条文は平成28年度改正で次のようなポイントが強調されました。

– 通常の給与に加算して支給される学資金であっても、役員や特別関係者を除けば非課税対象となる可能性がある
– 逆に、生活費など使途が明確でない場合や、業務報酬の性格が強いものは課税対象

つまり、制度を正しく理解せずに支給すれば「経済的利益」とみなされ課税リスクが生じます。

## 企業が支援する奨学金返済はどうなる?

実務上多く見られるのは、社員の奨学金返済支援です。この場合も非課税で処理できる条件があります。

– 返済支援額が給与とは別枠で支給されている
– 実際に返済に使われた証拠がある
– 支援対象者が「役員・その家族・特別関係者」ではない

日本学生支援機構の「代理返還制度」を活用するのが安全な方法の一つです。

## 経営者が押さえるべきポイント

1. 学資金や返済支援金の「資金使途」は明確に
2. 対象者に「役員や家族」が含まれていないかを事前確認
3. 支給時の「形式」と「証拠資料」は必須
4. 税務署の判断と裁判例には一定の距離があることを理解する

## まとめ:人材支援の意図を、制度と整合させる

人材育成への投資は、未来への布石。しかしその善意が、税務的には「経済的利益」と認定されてしまうケースも少なくありません。意図と制度を合致させるには、専門家との連携が不可欠です。