
2025年から本格導入が始まる「GSS(ガバメントソリューションサービス)」と、2026年の「KSK2」への刷新により、国税庁の税務行政が大きく変わります。これまで一部の法人に限定されていた“オンライン税務調査”が、すべての納税者へと対象拡大され、相続税申告を行う個人も例外ではなくなります。
本記事では、これらの税務DXの流れが、相続税の現場にどのような影響を与えるのかを、相続人やその支援者の視点から解説します。
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## 1. 税務行政のデジタル化──オンライン税務調査の時代へ
これまでの税務調査は「実地」が原則でしたが、2025年9月から金沢・福岡の国税局で先行導入される「GSS」により、調査官と納税者が**オンラインで面談・資料提出**を行う形へと移行していきます。
特に注目すべきは、**相続税や贈与税など“資産税”分野も対象に含まれる**点です。これにより、相続税申告を終えた方も、将来的には「オンラインで税務調査の連絡が来る」時代が到来する可能性があります。
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## 2. 相続人にとっての影響──「調査対応」も変わる
相続税申告後に調査が入るケースは、一般的に全体の1割程度と言われています。従来は税務署からの電話連絡や書面によるやり取りが中心でしたが、今後は以下のような対応が求められます:
– 調査官との連絡は**メール中心**
– 質疑応答や面談は**Web会議**
– 資料のやり取りは**オンラインストレージ**
これらは、相続人が**高齢だったりITに不慣れな場合には大きなハードル**となることも。同意が前提とはいえ、「調査はオンラインで」という選択肢がスタンダードになる時代がすぐそこに来ています。
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## 3. KSK2で変わる税務調査──情報は“横断的に”つながる
2026年9月には、国税庁の基幹システム「KSK」が「KSK2」へと刷新され、税目ごとの情報が**横断的に統合**されます。これにより、例えば以下のような影響が考えられます:
– 生前の所得や贈与、法人取引の状況が**一気通貫で把握可能**
– 他の相続人との資産移転が**迅速に照会可能**
– **紙ベースの申告でもデジタル化され、AIにより分析される**
つまり、調査官にとっても「違和感のある申告内容」はより発見しやすくなり、形式だけの申告や曖昧な資料では対応が難しくなる時代です。
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## 4. 相続人・支援者が今すべき準備とは
今回の税務DXにより、相続税の申告やその後の対応も含めて、「透明性」と「一貫性」が強く求められるようになります。対応策としては:
– **相続財産の全体像を正確に把握・記録すること**
– **申告内容の整合性を意識した説明資料を整えること**
– 税務調査に備えて、**税理士や専門家との協議記録を残しておくこと**
– **メール・クラウド・Web会議ツールの基本操作に慣れておくこと**
特に相続税申告に不慣れな方、専門家に任せきりだった方は、**「調査される可能性」までを見据えた申告と事後管理が必要**です。
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## まとめ──相続申告は“提出して終わり”の時代ではない
税務行政のデジタル化は、手続きの効率化をもたらすと同時に、**申告後の対応力も問われる時代**を意味します。相続人やその家族、支援する税理士・FPは、単なる申告書の提出にとどまらず、「申告→調査対応→完了」までを視野に入れた**総合的な相続対策**が求められるようになります。
国税庁のDXは止まりません。今後も情報をキャッチアップしながら、しっかりと準備していきましょう。