
「うちは普通の家庭だから、相続税は関係ない」
そう考えている方にとって、今回の公表データは少し衝撃的かもしれません。
国税庁は12月16日、
「令和6年分 相続税の申告事績」と「相続税調査の状況」を公表しました。
その中で明らかになったのは、**相続税が本格的に“大衆化”してきた現実**です。
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■ 相続税の課税割合、ついに10%超え
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令和6年分のデータによると、
・死亡者数(被相続人数):160万5,378人
・相続税の申告が必要だった人数:16万6,730人
・課税割合:**10.4%**
これは、**昭和42年以降、全国ベースで初めて10%を超えた**という歴史的な数字です。
単純に言えば、
👉 **亡くなった方の「約10人に1人」は相続税申告が必要**
という時代に入った、ということです。
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■ 相続税額・財産総額も過去最高水準
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令和6年分の相続税申告事績では、
・課税価格総額:23兆3,846億円(前年比8.1%増)
・申告税額総額:3兆2,446億円(前年比8.0%増)
いずれも、基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で**最高額**となりました。
内訳を見ても、
・現金・預貯金等:8兆5,602億円
・有価証券:4兆3,676億円
・その他(不動産以外の資産等):3兆162億円
と、**ごく一般的な資産が着実に増えている**ことが分かります。
「特別なお金持ちの話」ではありません。
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■ 税務調査は確実に厳しくなっている
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相続税について、もう一つ見逃せないのが調査の状況です。
【実地調査】
・件数:9,512件(前年比11.2%増)
・追徴税額:824億円(過去最高)
・1件あたり追徴税額:867万円
【簡易な接触(書面・電話等)】
・件数:21,969件
・追徴税額:138億円(5年連続で過去最高)
さらに、
・無申告事案の追徴税額:142億円(3年連続過去最高)
・海外資産関連の調査も大幅増
と、「申告しなければ見逃される」時代では完全になくなっています。
令和6年からは、**AIを活用した相続税調査**も本格的に始まっています。
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■ 相続人にとっての現実的なリスク
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今回のデータから、相続人の立場で読み取るべきポイントは明確です。
✔ 相続税は一部の富裕層だけの話ではない
✔ 現金・預貯金中心の家庭ほど対象になりやすい
✔ 申告漏れ・無申告は高確率でチェックされる
✔ 調査後の追徴税額は「想像以上に重い」
「知らなかった」「うっかり」が、
数百万円~数千万円の負担になるケースも珍しくありません。
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■ まとめ:相続は“発生前”がすべて
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相続税は、
・亡くなってから考える
・申告期限ギリギリで慌てる
ほど、不利になります。
✔ 財産の把握
✔ 生前贈与や分割の整理
✔ 専門家への事前相談
これらを**生前から進めていたかどうか**で、結果は大きく変わります。
相続税の課税割合が10%を超えた今、
「うちは大丈夫」という感覚こそが、最大のリスクかもしれません。
まずは、ご自身のご家庭が
**“申告が必要になる可能性があるのか”**
そこを確認することから始めてみてください。