
「父が亡くなったときに母が相続したけれど、名義変更をしていなかった」
そして、その後に母も亡くなり、今度は子が相続することになった。
このように“登記をしないまま次の相続が発生する”ケースは、実は珍しくありません。
2024年から相続登記が義務化されたこともあり、「どうすればよいのか」と不安に感じている相続人の方も多いのではないでしょうか。
今回は、「父の名義のまま二度の相続が起きた不動産」の登記について、実務上の考え方と注意点をわかりやすく整理します。
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## まず押さえておきたい原則
### 所有権は「登記」ではなく「相続」で移転しています
今回のケースでは、登記名義が父のままであっても、法律上の所有権は次の順で移転しています。
父 → 母 → 子
つまり、登記がされていなくても、相続が発生した時点で所有権は移っている、というのが大前提です。
ここは非常に重要なポイントです。
「名義が父のままだから、まだ父のもの」と思われがちですが、実体としてはすでに母、そして子へと権利は移転しています。
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## 原則は「2回の相続登記」
通常は次の2段階で登記を行います。
① 父から母への相続登記
② 母から子への相続登記
これは、権利の移転の流れをそのまま登記に反映させる、という考え方です。
ただし、ここで実務上の大切なポイントがあります。
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## 条件を満たせば「1回の登記」で済むこともある
次のような条件がそろっている場合には、例外的に「1回の登記」で直接、父から子へ名義変更することが認められています。
代表的な条件は次のとおりです。
・最初の相続(父→母)で取得者が1人に確定している
・遺言書や遺産分割協議書などの証拠書面がある
・権利関係が明確で争いがない
この場合、登記の形式としては「父 → 子」と直接移転したように見えますが、登記原因の欄に、
「〇年〇月〇日 母相続」
「〇年〇月〇日 子相続」
と記載することで、実際の権利移転の流れ(父→母→子)がきちんと反映されます。
実務ではこの方法がよく使われます。
手続がシンプルになり、費用や時間の負担も軽減できるためです。
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## 2024年からは「相続登記が義務」になっています
ここは現在の相続で特に重要な点です。
相続登記は、
「相続を知った日から3年以内」
に行う義務があります。
正当な理由なく放置した場合は、
10万円以下の過料
が科される可能性があります。
今回のように、過去の相続で登記をしていなかった場合でも、
・現在その不動産を相続した人
・登記義務を負う立場になった人
には、義務が生じます。
つまり、
「昔のことだから大丈夫」
ではなく、
「今、相続した時点からカウントが始まる」
と理解しておくことが大切です。
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## 税務面でも見落としやすいポイント
税理士の立場から、もう一つお伝えしたい重要な視点があります。
それは、
登記をしていなくても
相続税や固定資産税の問題は進んでいく
ということです。
例えば、
・名義が父のままでも、実際の所有者として課税される
・売却や活用の際に手続が止まる
・相続人が増えるほど手続が複雑になる
といった問題が現実に起こります。
特に時間が経つほど、
相続人が亡くなる
相続人が増える
書類がそろわない
という「手続の難易度の上昇」が起きます。
ここが実務上、最も大きなリスクです。
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## まとめ
「名義変更をしていないだけ」
と思っていたことが、次の相続で大きな負担になる。
これは、現場で本当によく見てきたケースです。
今回のポイントを整理すると次の3つです。
・所有権は「父 → 母 → 子」とすでに移転している
・原則は2回の登記だが、条件がそろえば1回でできる
・相続登記は義務なので、早めの対応が重要
相続は、時間が経つほど難しくなります。
逆に言えば、早く動くほどシンプルに解決できます。
もし
「名義が昔のままになっている」
「親の代の手続が終わっていない」
という状況があれば、いまが整理の良いタイミングかもしれません。
将来のご家族の負担を減らすためにも、
“今できる一歩” を踏み出していただければと思います。