
贈与税の制度は一見シンプルに見えて、実務では「思い込み」による誤りが少なくありません。
今回は、国税庁が公表した「誤りやすい事例」から、公務員の方にも関係の深い【相続時精算課税】について解説します。
【結論から】
相続時精算課税を一度選択すると、
👉 特別控除2,500万円を使い切っても
👉 その贈与者からの贈与について
👉 暦年課税に「戻す」ことはできません。
【よくある誤解】
事例で紹介されているのは、次のようなケースです。
「前年に相続時精算課税を選択し、特別控除2,500万円をすべて使い切った。
だから今年の贈与分は、暦年課税(110万円控除)で申告しよう」
直感的には「もう控除がないなら、暦年課税に戻した方が有利では?」と思いがちですが、これは誤りです。
【制度の正しい理解】
相続時精算課税は、
・贈与者ごとに選択する制度
・一度選択すると、その贈与者からの贈与は「ずっと」相続時精算課税
と法律で定められています(相続税法21条の9)。
つまり、
✔ 特別控除を使い切ったかどうか
✔ 税額が発生するかどうか
にかかわらず、「制度の選択は変更不可」という点が重要です。
【特別控除後はどう課税される?】
特別控除2,500万円を使い切った後の贈与については、
・相続時精算課税の基礎控除後の金額に
・一律20%の税率を適用
して贈与税を計算します(相続税法21条の13)。
「暦年課税の110万円控除」は、もう使えません。
【公務員の方にとっての実務的ポイント】
公務員の方は、
・親族間での資金援助(住宅取得、教育資金など)
・退職後を見据えた生前贈与
といった場面で、相続時精算課税を検討されることが多い傾向にあります。
だからこそ、
「とりあえず今年だけ相続時精算課税」
という選択は非常に危険です。
一度選ぶ=将来にわたる影響が続く
この前提を理解した上で、慎重に判断する必要があります。
【まとめ】
・相続時精算課税は、一度選ぶと暦年課税へは戻れない
・特別控除を使い切っても制度は継続
・その後の贈与は一律20%課税
・「とりあえず選択」は後悔のもと
制度は「知っている」だけでなく、「使い方を誤らない」ことが何より重要です。
生前贈与を検討する際は、ぜひ一度立ち止まって全体設計を考えてみてください。