
「相続放棄をしても、生命保険の死亡保険金は受け取れるのか?」
これは相続の場面で非常によくあるご相談です。特に公務員の方々は、ご家族やご自身の資産管理に堅実な関心を持たれているケースが多く、万が一に備えた正確な理解が必要です。今回は、夫に借金がある場合に妻が相続放棄をし、なおかつ生命保険金を受け取ることができるかどうかについて、税理士としての視点から解説します。
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【生命保険金は「相続財産」ではない】
まず前提として、生命保険金は「受取人固有の財産」として扱われます。つまり、被相続人(今回のケースでは夫)の遺産ではなく、あらかじめ指定された受取人(妻)に直接支払われるものです。
このため、たとえ妻が相続放棄をしても、保険金を受け取る権利そのものは影響を受けません。相続とは別のルートで取得する財産と整理されているのです。
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【借金の差押えリスクは?】
「相続放棄=借金の相続もしない」というのが民法の原則です。したがって、相続放棄をした妻には、被相続人の債務(銀行借入など)に関する責任は及びません。
したがって、妻の固有財産である生命保険金が、亡くなった夫の借金の返済にあてられることはなく、差押えの対象にもなりません。
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【注意点:相続放棄が無効にならないように】
ただし、相続放棄をする際には、次の点に注意が必要です。
– 相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述すること(民法915条)
– 放棄前に相続財産を処分したり、債務を支払ってしまうと「単純承認」とみなされる可能性があること(民法921条)
これらの点を見落とすと、相続放棄が無効になり、結果的に借金を背負うことになってしまう危険もあります。
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【まとめ:正しい手続きを踏めば安心】
公務員の皆さまは、ご家族の将来にわたる安定を大切にされる方が多く、相続や保険に関する制度の正確な理解が不可欠です。
今回のように、「相続放棄+生命保険金の受け取り」は制度上可能ですが、放棄の期限や手続きに細心の注意を払うことが重要です。
不安な場合は、税理士や弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
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【公務員向けワンポイントアドバイス】
生命保険の受取人指定や、万が一の備えについての見直しは、定年後のライフプラン設計にも直結します。「相続=遺産分け」だけでなく、「残された家族が安心して生活できる形」を整える意識を持つことが、資産管理の第一歩です。