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生命保険の受取人、誰を選んでも大丈夫?〜見落としがちな税務リスクと設計ポイント〜

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2025.12.19

「生命保険の受取人を家族以外にしたいけど、法律的・税務的に問題ないの?」
そんな相談を受けることがあります。
特に公務員の方は、家計や将来設計に慎重な一方で、「保険の受取人の選び方」にはあまり馴染みがない方も少なくありません。
今回は、保険契約における受取人の指定について、法律・税務の観点から整理し、見落としがちな注意点と実務上のヒントをお伝えします。

【受取人は誰でもいいのか?】

生命保険の契約において、死亡保険金の受取人は基本的に「契約者の自由」によって指定できます。
とはいえ、**保険会社が契約時に認める受取人には一定の制限**があります。

一般的には、戸籍上の配偶者や2親等以内の親族(両親・子・兄弟姉妹・祖父母・孫など)とされており、これ以外の人物(内縁関係者、婚約者、共同経営者、親しい友人など)を指定する場合には、保険会社に事前確認が必要です。

ポイントは、「法律上できる」ことと「保険会社が認める」ことは別だという点です。
契約時には「関係性の説明」や「同意書の提出」が求められることもあり、スムーズに契約が進まないケースもあります。

【税務上の注意点〜非課税枠が使えなくなる可能性】

生命保険の受取人を誰にするかは、**税金にも大きく影響します。**

たとえば、次のような契約形態を想定しましょう。

– 契約者(=保険料を支払う人):Aさん(被保険者と同一、公務員)
– 被保険者:Aさん
– 死亡保険金の受取人:Aさんの配偶者、または子(=法定相続人)

この場合、死亡保険金は**「みなし相続財産」**として相続税の課税対象になりますが、**500万円×法定相続人の数**という非課税枠が適用されます。
たとえば、配偶者+子2人なら1,500万円まで相続税が非課税になるのです。

ところが、受取人が**法定相続人以外(たとえば、内縁の配偶者や親しい友人)**だった場合はどうなるでしょうか。

→ **非課税枠が使えず、保険金の全額が課税対象**となります。

仮に同じ1,500万円の保険金でも、税負担が大きく変わるわけです。

【受取人の見直しも忘れずに】

意外と多いのが、「結婚・離婚・子どもの独立」など環境の変化があっても、**保険の受取人を変更していない**ケース。

保険契約では、受取人の変更は**契約者の意思と被保険者の同意**があれば原則可能です。
ですが、受取人がすでに亡くなっていたり、氏名が変更されている場合には、**保険金の支払いに手間取ることも**あります。

特に長期で加入している保険や、職場経由で加入している団体保険などは、「そもそも誰を受取人にしていたか覚えていない」という声も。

→ **毎年1回、家計の見直しとあわせて「受取人チェック」を習慣化するのがおすすめ**です。

【公務員ならではの事情とリスク管理】

公務員の方は、給与や退職金が安定している一方で、**資産形成や保障設計が後回し**になりがちです。

生命保険は「リスクに備える」意味でも、「相続・税務対策」の意味でも有効な手段です。
ただし、**設計を誤ると、せっかくの保険金が「課税リスク」や「争族」の火種になることも**あります。

また、公務員の中には「独身で身寄りがない」「家族に負担をかけたくないから親しい友人を受取人にしたい」といったご事情をお持ちの方もいるでしょう。

そうした場合でも、**契約前に保険会社への事前確認や専門家への相談**を行うことで、トラブルを防ぎつつ安心な保険設計が可能です。

【まとめ】

✔ 生命保険の受取人は、基本的に契約者の自由で決められる
✔ ただし、保険会社ごとに「誰を認めるか」は異なるため事前確認が必要
✔ 税務上は、法定相続人以外にすると非課税枠が使えず、税負担が増える可能性
✔ 環境変化による受取人の見直しは定期的に実施を
✔ 保険の設計には「税務」と「実務」両面の視点が欠かせない

「誰に、どれだけ、何のために残すのか?」
生命保険は、あなたの想いや配慮を形にするための有力なツールです。

目先の保障だけでなく、長期的な視点での見直しと戦略的な設計が、結果的に家族も自分も守ることにつながります。