年収の壁が手取り額に与える影響
年収の壁が手取り額に与える影響は、具体的な例を通じて理解することができます。著名なシンクタンクである野村総合研究所では、以下の条件に基づく世帯の手取り額について試算していましたのでご紹介します。
・夫の年収 500万円(家族手当は含まず)
・二人世帯(他に扶養家族なし)
・パートタイムで働く妻の年収が106万円超で社会保険加入(本人負担の社会保険料率14%)
・家族手当あり 月額17,000円(夫が勤務する事業所から支給)
(厚生労働省『平成27年就労条件総合調査』平均支給額17,282円より)
・家族手当の支給制限 妻の年収103万円超で支給停止
・夫の年収 500万円(家族手当は含まず)
・二人世帯(他に扶養家族なし)
・パートタイムで働く妻の年収が106万円超で社会保険加入(本人負担の社会保険料率14%)
・家族手当あり 月額17,000円(夫が勤務する事業所から支給)
(厚生労働省『平成27年就労条件総合調査』平均支給額17,282円より)
・家族手当の支給制限 妻の年収103万円超で支給停止
具体例を踏まえた年収の壁の影響
妻の年収が103万円の場合、夫の年収を合わせた世帯年収額(手取り)は515万円になります。
妻の年収が106万円に増えた場合、本ケースの場合、家族手当が無くなるとともに、妻の勤務先によっては社会保険への加入義務が発生し、社会保険料の支払いが必要になるため世帯年収額(手取り)は489万円になり、妻の年収が103万円の場合よりも26万円減ります。
その後、妻の年収が141万円になるまで、世帯年収額(手取り)は妻の年収が103万円の場合よりも低い状況が続きます。103万円を超えると、妻の年収を約4割増やさないと世帯年収の水準が元に戻らない計算になります。
同じ仕事を継続すると仮定した場合、壁を超えてしまうと、一定の収入になるまで就労時間を大幅に増やせなければ、いわゆる「働き損」が生じてしまうということです。この「働き損」を避けるように、パートタイムで働く妻において「就業調整」を行っている人が少なくない現状が続いています。
まとめと今後の展望
年収の壁が手取り額に与える影響を明らかになり、年収が上がるほど、所得税や社会保険料などの控除額も増えるため、手取り額は減少していく傾向があります。また、年収が一定の範囲内で上昇しても、手取り額の増加幅は限られていることも分かりました。これは、所得税や社会保険料の控除率が高くなるためです。 今後の展望としては、年収の壁による手取り額への影響を軽減するために、税制改革や社会保険制度の見直しが必要とされます。また、社会保険料負担の公平を目指す観点では現行の第三号被保険者(会社員の妻等が社会保険の扶養に入っている状態)の存廃についても議論が進むことと思われます。これらの課題に対して、政府や関係者が積極的に取り組むことで、より公平で持続可能な社会を実現することが期待されます。