
相続した土地や家屋をすぐに売却した場合、「3,000万円控除は使えないのでは?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。特に公務員の皆さんのように、転勤や職務都合で住まいの変化があるケースでは、誤解が起きやすいテーマです。今回は大阪国税局の事例集をもとに、よくある誤解と正しい取り扱いを解説します。
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## 「居住期間が短い=控除NG」は誤り
大阪国税局が令和6年分として公表した「誤りやすい事例」には、以下のようなケースが紹介されています。
> 父から借りて住んでいた家の敷地を相続し、すぐに家と土地を売却した場合、居住期間が短いため3,000万円控除の特例は使えないと誤って判断した。
このように、「所有していた期間が短い」「相続後すぐに売った」ことを理由に、特例を使えないと誤解してしまう例は少なくありません。
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## 判断基準は「形式」ではなく「生活実態」
重要なのは、**その家が本当に生活の拠点だったかどうか**です。
税務上、居住用財産として認められるかどうかは、次のような要素を総合的に判断します(措通31の3-2、35-6)。
– 実際に日常生活を送っていたか
– 入居の目的
– 家屋の構造や設備の状況
– 登録上の所有者であったかどうかだけではなく、住まいとしての利用実態
つまり、「相続してすぐ売ったからダメ」ではなく、「その前からそこに住んでいたか」がポイントです。
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## 公務員の皆さんが気をつけたい点
公務員の方は、官舎住まいや転勤などによる住まいの変化が多いため、以下の点に注意が必要です。
– 一時的に所有者でなくても、実態として住んでいた家であれば特例対象になり得る
– 売却前に一時的に転居していた場合でも、生活拠点としての実態があれば適用可能
– 「形式的な所有期間」よりも「居住の実態」に基づいた判断がされる
特に、親から借りて住んでいた家を相続したケースなどは、正しく理解しないと大きな控除を逃してしまう可能性があります。
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## まとめ:制度の“読み方”が変われば、税金は大きく変わる
税法は、形式的な条件だけでなく「人の暮らし」に着目して判断されることがあります。今回の3,000万円控除のような制度も、見かけの所有期間だけで判断してしまうと損をする可能性があります。
制度の正しい理解が、自分と家族の資産を守る第一歩です。
特に公務員の方は、職務上の住まいや異動により事例が複雑化しやすいため、一度専門家に相談することをおすすめします。
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【この記事を書いた人】
小林 匠|税理士/CFP®/一級FP技能士
公務員・教職員の方々の相続・不動産に関するご相談を多数経験
「寛容・尊重・応援」の理念で、暮らしと制度をつなぐ支援を行っています。