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大阪市でよくある「遺産分割前」の相続税申告、どう対応する?

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2025.12.12

相続財産が分割されていない場合でも相続税申告は必要?期限と注意点を解説

相続が発生すると、遺産分割協議がすぐにまとまらないケースは少なくありません。
相続人が複数いる場合や、不動産が含まれている場合などは、話し合いに時間がかかることも多いでしょう。

では、**相続財産がまだ分割されていない状態でも、相続税の申告は必要なのでしょうか。**
この記事では、相続財産が未分割の場合の相続税申告のルールや注意点について解説します。

#### 相続税の申告期限は「10か月以内」

相続税の申告と納税は、**被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内**に行う必要があります。
通常は「死亡日」の翌日から10か月以内と考えて差し支えありません。

被相続人の死亡時の住所が日本国内にある場合は、**被相続人の住所地を所轄する税務署**へ申告します。

ここで重要なのは、**相続財産が分割されているかどうかに関係なく、申告期限は延びない**という点です。
「遺産分割が終わっていないから申告できない」という理由で期限を過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税が課されるおそれがあります。

#### 未分割でも相続税申告はしなければならない

相続財産が分割されていない場合でも、**相続税の申告は必ず期限内に行う必要があります**。
分割されていないことを理由に、申告そのものをしなくてよい、あるいは期限が延びるということはありません。

遺産分割協議が成立していない場合には、
**各相続人が、民法に規定する法定相続分(または包括遺贈の割合)で財産を取得したものとして相続税を計算**し、申告・納税を行います。

#### 特例が使えない点に注意

未分割の状態で申告を行う場合、注意しなければならないのが**相続税の特例が適用できない**点です。

具体的には、次のような特例が原則として使えません。

* 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
* 配偶者の税額軽減の特例

これらは、**実際に誰がどの財産を取得したのかが確定していること**を前提とする制度です。
そのため、未分割申告では適用できず、結果として一時的に相続税額が高くなることがあります。

#### 後日分割が成立した場合は「修正」や「更正」が可能

相続税を法定相続分などで申告した後、遺産分割協議が成立することもあります。
その場合、**実際の分割内容に基づいて税額を再計算**し、必要に応じて手続きを行うことができます。

* 実際の分割に基づく税額が「多くなる」場合
→ **修正申告**を行います。

* 実際の分割に基づく税額が「少なくなる」場合
→ **更正の請求**を行います。

更正の請求については注意が必要で、
**分割があったことを知った日の翌日から4か月以内**という期限が設けられています。
修正申告と異なり、いつでもできるわけではありません。

#### 特例の適用は「3年以内の分割」が原則

未分割申告後の修正申告や更正の請求では、
**小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を適用することが可能**です。

ただし、その前提として、
**原則として相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が成立していること**が求められます。

分割が長引くと、特例が使えなくなる可能性もあるため、スケジュール管理は非常に重要です。

#### まとめ:未分割でも「申告は先、分割は後」

相続財産が分割されていない場合でも、相続税の申告期限は待ってくれません。
いったん法定相続分などで申告・納税を行い、その後に分割が成立したら修正する、という流れが基本です。

相続税は期限や特例の適用条件が非常に複雑です。
遺産分割がまとまっていない場合や、税額が大きくなりそうな場合は、早めに税理士や専門家へ相談することで、不要な税負担や手続ミスを防ぐことができます。

**根拠法令等**
相続税法19条の2、27条、31条~33条、55条
租税特別措置法69条の4