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大学在学中の生活費を4年分まとめてもらうと贈与になる?

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2025.12.17

【大学在学中の生活費を4年分まとめてもらうと贈与になる?】
― 公務員の方こそ注意したい「生活費非課税」の落とし穴 ―

「大学生の子どもに生活費を渡すだけだから、贈与税は関係ない」
そう思われている方は多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、大阪国税局が公表している
「資産課税関係 誤りやすい事例(贈与税関係)」に掲載された、
実務上とても重要なケースです。

特に、公務員の方は
・税務に詳しいと思われやすい
・後から指摘されると信用問題になりやすい
という立場でもあるため、正しい理解が欠かせません。

■ 事例の概要
東京の大学に進学する長男に対し、
親が在学中4年間の生活費として
720万円(月15万円×48か月)を一括で渡しました。

「生活費は贈与税がかからない」
そう考えて、贈与税の申告は行いませんでした。

一見、もっともに見える判断ですが、
これは“誤った取扱い”とされています。

■ 何が問題なのか?
相続税法では、次のように定められています。

生活費や教育費が贈与税の非課税となるのは、
「必要な都度、直接その目的に使うために贈与された場合」に限られる。

つまり、
✔ 毎月の生活費として必要な分を都度渡す
✔ 学費の支払時に直接学費に充てる
こうしたケースは非課税になります。

しかし今回のように、
・4年分をまとめて渡す
・受け取った子が預貯金として管理する
という場合は、「将来の生活費のための財産取得」とみなされ、
原則として贈与税の課税対象となります。

■ よくある誤解
「結局、生活費に使っているから同じでは?」
という声をよく聞きます。

ですが税務では、
“使い道”よりも“渡し方”が重視されます。

一括で渡した時点で、
子どもが自由に使える財産を取得したと判断されるため、
生活費名目でも非課税にはならないのです。

さらに、
その資金を預金したり、
株式や不動産の購入に使った場合は、
その金額全体が贈与税の課税対象となります。

■ 公務員の方への実務的アドバイス
・子どもへの仕送りは「毎月」「必要な分だけ」
・学費は可能な限り親が直接支払う
・多額の一括贈与をする場合は、事前に専門家へ相談

「知らなかった」では済まされないのが税務の世界です。
特に身分の安定した公務員の方ほど、
形式面まで含めた正しい対応が求められます。

■ まとめ
生活費・教育費は無条件に非課税ではありません。
ポイントは、
「必要な都度、直接使うために渡しているか」。

ご家族を思っての行動が、
思わぬ税負担につながらないよう、
ぜひ一度、贈与の方法を見直してみてください。

正しい知識は、
家族と自分自身を守る最良のリスク管理です。