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台風被害を受けた公務員の方へ──「雑損控除」と「災害減免法」で所得税が軽減される可能性があります

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2025.10.20

近年の台風は、もはや「毎年のこと」と言っても過言ではありません。
公務員の皆さんの中にも、自宅や家財に被害を受けた経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、こうした自然災害による損害については、所得税の面で「雑損控除」または「災害減免法」による救済が受けられる場合があります。
今回はその仕組みと、どちらを選ぶべきかの考え方を分かりやすく解説します。

## 1. 「雑損控除」とは?
所得税法による雑損控除は、災害などで生活に必要な資産(住宅・家財など)が損害を受けた場合に、損失額を所得から差し引ける制度です。

控除できる金額は次のうちいずれか多い方です:
– (損失額 − 所得金額×1/10)
– (災害関連支出の金額 − 5万円)

例えば、台風で屋根が飛び、修理費が100万円かかり、所得が600万円だった場合、
「100万円−60万円=40万円」と「修理費100万円−5万円=95万円」を比べ、多い方(95万円)が控除対象となります。

さらに、その年に控除しきれない場合は、3年間にわたって繰り越すことが可能です。
確定申告の際には、修理費などの領収書を添付する必要があります。

## 2. 「災害減免法」による所得税の軽減・免除
もう一つの制度が、災害減免法による軽減措置です。
こちらは「被害の程度」と「所得金額」に応じて、所得税を直接減免してもらえる仕組みです。

対象となるのは次の条件を満たす方です:
– 所得金額が1,000万円以下
– 住宅や家財の損害額が時価の1/2以上

軽減割合は以下のとおりです:
– 所得500万円以下:全額免除
– 500万円超~750万円以下:1/2軽減
– 750万円超~1,000万円以下:1/4軽減

## 3. どちらを選べば有利?
実際には、**雑損控除と災害減免法はどちらか一方しか適用できません**。
ただし、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、自動的に有利な方を判定してくれます。

もし修理費などが大きく、所得が比較的安定している公務員の方であれば、
多くの場合は「雑損控除」の方が有利になるケースが多いです。

## 4. 最後に──心の回復と生活再建を支える制度
自然災害による損失は、金銭面だけでなく、心の負担も大きいものです。
ですが、こうした税制上の救済措置は、「再出発のための支え」として設けられています。

いざという時の備えとして、「雑損控除」や「災害減免法」の概要を知っておくことが、
ご自身やご家族の安心につながるでしょう。

──税理士・CFP®/クレメンティア税理士事務所代表
小林 匠