
最近は、公務員の方の間でも「少額からできる不動産投資」として、不動産クラウドファンディングや不動産特定共同事業(不特事業)への関心が高まっています。
しかし、この投資の“契約形態”を誤ると、所得区分が「不動産所得」となり、副業禁止規程に抵触するおそれがあることをご存じでしょうか?
今回は、公務員が特に注意すべき不特事業の税務上の扱いについて解説します。
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## 不特事業の仕組みと広がり
不特事業とは、不動産特定共同事業者(不特事業者)が投資家から出資を募り、その資金で不動産を取得・賃貸し、賃料収益や売却益を分配する仕組みです。
クラウドファンディング型の不動産投資もこの一形態にあたり、10万円前後から投資できる手軽さが人気を集めています。
しかし、公務員の立場で参加する場合、「どの契約型を選ぶか」で税務上の所得区分が変わり、その結果、服務上のリスクも変わります。
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## 「任意組合契約型」は不動産所得扱いに
任意組合契約型では、投資家(組合員)が共同で不動産事業を行い、取得した不動産や賃料収入が組合員自身に帰属します。
そのため、得られる分配金は「不動産所得」とされます(所得税法26条)。
ここで注意が必要なのは、不動産所得は“事業性を有する所得”とみなされるため、公務員が得る場合、地方公務員法や国家公務員法で定める「営利企業等の従事制限」に抵触するおそれがある点です。
つまり、形式的には「投資」でも、実質的には“副業”と判断されるリスクがあります。
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## 「匿名組合契約型」なら雑所得に区分される
一方、匿名組合契約型では、不特事業者が主体となって不動産を運用し、投資家はその事業に資金を出すだけです。
不動産は不特事業者の所有となり、投資家が受け取る分配金は「投資の対価」として扱われるため、税務上は「雑所得」として区分されます(所得税基本通達36・37共-21)。
この「雑所得」であれば、公務員が自ら不動産を所有・運営するわけではないため、原則として副業禁止規定には抵触しにくいと考えられます。
ただし、投資額や収益規模によっては、所属先による個別判断が求められることもあるため注意が必要です。
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## 公務員が気をつけるべき3つのポイント
1. **契約形態を確認する**
契約書や商品説明に「任意組合型」「匿名組合型」のどちらかが明記されているかを必ず確認しましょう。
2. **不動産所得にならないようにする**
不動産を直接所有したり、賃貸経営とみなされる形式は避けるのが安全です。
3. **所属先の服務規程をチェックする**
たとえ少額でも、投資収益が定期的に発生する場合、事前の届け出や許可が必要なケースもあります。
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## まとめ:安全に資産運用を行うために
不特事業は、少額から不動産収益を得られる魅力的な仕組みですが、公務員の場合は契約形態によって“副業扱い”になる可能性があります。
「匿名組合契約型」を選ぶことが基本的な安全策です。
また、最終的な判断は勤務先の服務規程と人事担当部署への確認が欠かせません。
正しい知識と慎重な姿勢で、公務員の立場を守りながら堅実な資産形成を進めていきましょう。
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クレメンティア税理士事務所
税理士/CFP/一級FP技能士 小林 匠
「誠実・戦略・信頼」を軸に、公務員のための安全な資産運用をサポートしています。