
親の逝去後、空き家となった実家を売る――。公務員の方からも「老人ホーム入所中だったが、空き家特例(3,000万円控除)は使えるのか?」というご相談が増えています。結論は「一定の要件を満たせば可能」。本稿では、2027年(令和9年)12月31日まで使える現行ルールを、忙しい公務員の方向けに要点と実務ステップで整理します。〔根拠:国税庁タックスアンサーNo.3306/3307、制度は令和9年12月31日まで適用〕。
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■ 空き家特例のキホン(誰が・いつまで・いくら)
・相続した「被相続人の居住用家屋」またはその敷地等を譲渡したとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除。
・適用期間:平成28年4月1日~令和9年12月31日(= 2027/12/31)の譲渡が対象。
・令和6年1月1日以降は、譲渡後に翌年2/15までの耐震改修や取壊しでも対象に拡充。
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■ 老人ホーム入所中でも使える?「特定事由」の3条件
被相続人(親)が要介護等で老人ホームに入っており、相続開始直前は実家に住んでいなかったケースでも、下記を満たせば“被相続人居住用家屋”に該当します。
① 要介護認定・要支援認定等(一定の障害支援区分を含む)を受けて入所していたこと
② 入所から相続開始直前まで、実家は「物品保管等」以外に使っていない(事業用・賃貸・他人居住はNG)
③ 入所後は、主として居住の用に供していた場所が老人ホームであること
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■ 公務員の方向け「適用チェックリスト」
□ 親の要介護・要支援の認定通知の写しがある(更新歴もわかる)
□ 老人ホームとの契約書・入退去日が確認できる
□ 相続開始直前まで、実家に同居者なし・賃貸化なし・事業利用なし
□ 建築が昭和56年5月31日以前/区分所有建物(マンション)ではない
□ 譲渡は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12/31」までに完了(例:2023/6/1相続なら2026/12/31まで)
□(耐震要件)旧耐震なら、耐震改修済みであるか、または取壊して土地で売却/令和6年以降は譲渡後翌年2/15までの改修・取壊しでも可
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■ よくある“つまずき”
・「親族が一時的に住んだ/貸駐車場にした」→ 対象外になり得ます。用途変更は厳禁。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
・「マンションの実家」→ 原則対象外(区分所有は不可)。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
・「価格だけ決まらず年度末にズレ込む」→ 期限(○年12/31)を跨ぐと適用不可。売買契約日と引渡期日を逆算管理。
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■ 手続きの流れ(忙しくてもこれだけは)
1)資料集め:介護認定通知、老人ホーム契約書・入退去記録、住民票除票、固定資産課税台帳、家屋の建築年証明(検査済証等)
2)用途確認:入所~相続直前までの使用実態をメモ化(第三者に説明できる客観記録)
3)耐震確認:旧耐震なら耐震改修or取壊し(令和6年以降の拡充も活用):contentReference[oaicite:8]{index=8}
4)自治体の「確認書」取得(必要な自治体あり:空き家対策担当)→ 税務申告で添付・提示を求められることがあります。:contentReference[oaicite:9]{index=9}
5)譲渡契約&申告:期限を意識し、必要書類を添付して確定申告(売却年の翌年)へ。
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■ 公務員の方へ:実務アドバイス(トラブル未然防止)
・「名義・相続人の整理」を先に。持分が分かれると決裁・契約の同意取りに時間を要します。
・「片付け・残置物撤去」は“物品保管等”の範囲内でOKだが、居住再開と誤解される使い方は避ける。
・「売却後改修・取壊しOK」の拡充(2024年譲渡以降の扱い)を押さえ、売却スケジュールの自由度を上げる。
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■ まとめ
老人ホーム入所中でも、介護認定の有無・空き家の使い方・建物要件・売却期限を満たせば、空き家特例(最大3,000万円控除)は活用可能です。相続・介護・売却が同時並行になることの多い公務員の皆さまは、まず証拠書類の確保とスケジュール管理から。迷ったら、早期に専門家へ。