
もし日本を100人の国に例えると、私たちの社会はどんな姿をしているのでしょうか。
厚生労働省の「令和7年版厚生労働白書」では、「100人で見た日本」として最新の統計がまとめられています。
そこから見えてくるのは、高齢化の進行と生活習慣病の増加、そして“支え合う仕組み”の再設計を迫る現実です。
今回は、公務員の皆さんにとって重要な視点から、このデータを読み解きます。
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## 1. 「100人の国」で進む少子高齢化
15歳未満の子どもは **11.2人(5年前は12.1人)**。
一方で65歳以上は **29.3人(28.4人)**、うち **75歳以上が16.8人(14.7人)**。
つまり、国民の3人に1人が高齢者、6人に1人が75歳以上という構造です。
社会保障や地域行政に関わる公務員にとって、これは“構造的な人口リスク”の顕在化を意味します。
特に、医療・介護・年金の制度を支える仕組みをどう維持・再構築するかが今後の大きなテーマとなります。
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## 2. 医療・健康データに見る“静かな変化”
通院している人は **41.7人(40.4人)** と微増。
在宅医療を受けている人は **0.2人** とわずかですが、これは“在宅ケアの芽”が広がっている兆しとも言えます。
一方で、生活習慣病の増加は深刻です。
がん(3.2人→1.4人)、心疾患(2.9人→1.4人)、糖尿病(4.4人→2.6人)──
いずれも5年前よりほぼ倍増。
高血圧性疾患に至っては **7.8人→13.0人** と約1.7倍。
健康寿命の延伸を掲げる中で、医療費の膨張をどう抑えるか。
これは国の財政だけでなく、自治体の予算・地域医療体制にも直結する課題です。
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## 3. 公務員に求められる“地域マネジメント思考”
介護サービスを受ける人は **3.9人→4.4人**。
障害者も **7.6人→9.3人** と増加。
支援が必要な人が着実に増える一方で、支える側の人口は減少しています。
これからの行政には、「制度を運用する側」から「地域をマネジメントする側」への転換が求められます。
たとえば、
– 医療・介護・福祉の連携促進(地域包括ケア)
– 健康増進や予防医療への投資
– 公共データを活用した課題発見と政策立案
といった分野で、公務員の現場感覚と財務感覚の両立が欠かせません。
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## 4. まとめ:「100人の国」をどう支えるか
「100人で見た日本」は単なる統計ではなく、“国の体温”を映す鏡です。
人口構成、疾病構造、生活習慣の変化──そのすべてが行政の現場課題と直結しています。
数字を見て終わりではなく、
「誰が支え、誰を支えるのか」
「支える仕組みをどう持続させるのか」
を問い直すことこそ、公務員に求められる姿勢です。
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✅ **ポイントまとめ**
・75歳以上が16.8人:超高齢社会が加速
・生活習慣病が倍増:医療費・予防対策がカギ
・介護・障害支援利用者が増加:福祉体制の再構築へ
・公務員には「地域マネジメント」と「財政持続性」の両立が必須
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“100人の国”を動かすのは、制度ではなく人の力です。
数字の奥にある「誰かの暮らし」を見つめる視点が、これからの行政を強くします。