
相続が発生すると、亡くなった方の確定申告「準確定申告」を相続人が行う必要があります。
しかし、**令和7年分から適用される所得税の控除改正**により、準確定申告のタイミングによっては「損をする可能性」があること、ご存知ですか?
今回は、基礎控除等の改正内容と、相続人として知っておくべき準確定申告の注意点を、税理士の視点でわかりやすく解説します。
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【1. 令和7年の準確定申告、控除が変わる分岐点は「12月1日」】
令和7年分から、所得税の基礎控除などが以下のように**引き上げ・新設**されました:
✅ 基礎控除額の引上げ
✅ 給与所得控除の最低保障額の引上げ
✅ 扶養親族の所得要件の緩和
✅ 「特定親族特別控除」の新設(扶養控除と併用可能)
しかし!
**準確定申告を令和7年12月1日“前”に提出した場合は、これらの控除改正の適用を受けられません。**
つまり、**同じ令和7年中の相続でも、申告日が11月末か12月以降かで納税額が変わる**可能性があるのです。
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【2. では11月末までに申告してしまったら…損?】
安心してください。12月1日以前に申告してしまっても、**「更正の請求」**という手続きを取ることで、改正後の控除を適用することが可能です(申告日から5年間有効)。
とはいえ、更正の請求には**再提出の手間**と**専門知識**が必要。
はじめから12月1日以降に申告するのが、スムーズで安心です。
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【3. 実務での注意点:e-Taxの入力方法が特殊】
令和7年分の準確定申告を12月1日以降に行う場合、e-Taxの申告書様式はまだ旧様式(令和6年分)のまま。そのため、入力方法に注意が必要です。
✅ 基礎控除:第一表の「基礎控除」欄は空欄のまま、「雑損控除」欄に金額を入力
✅ 特定親族特別控除:第一表の「扶養控除」欄に合算して入力
※本来の雑損控除や扶養控除と**合算**する必要があるので、控除漏れに注意!
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【4. 相続人の立場として、何をすべきか?】
相続人が複数いる場合、準確定申告は**「共同で」行う**ことが原則です。
その際に大切なのは、以下の3点:
– 亡くなった方の**年間収入と支出の把握**
– 申告期限(相続開始を知った日の翌日から4か月)と**12月1日との関係確認**
– 控除額や申告方法について**税理士との相談**を早めに行うこと
控除の適用により、数万円〜十数万円の税額差が出ることもあります。
「亡くなった直後でバタバタしていて…」という時期ですが、準確定申告の判断は**まさに“知っているかどうか”の差**が大きく影響します。
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【まとめ】
令和7年分からの所得税改正は、「12月1日以前か以後か」で準確定申告の控除額が変わるという、非常に重要なポイントを含んでいます。
特に以下のような方は、**申告時期の調整を検討する価値があります**:
✅ 控除額が大きくなりそうなケース(扶養親族が多いなど)
✅ 被相続人に給与収入や年金がある場合
✅ 収入が控除額のボーダーに近い場合
相続はただでさえ複雑な手続きが多く、不安も大きいものです。
そうした中でも、税金面で不利益が出ないように、**専門家の助言を早めに受けておくことが、相続人にとっての大きな安心につながります。**
もし「うちの場合はどうなんだろう?」という疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。