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不動産小口化商品は本当に相続税対策になるのか?税理士が解説するメリットと注意点

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2026.03.06

金融機関から「相続税対策になりますよ」と、不動産小口化商品を勧められたことはありませんか。
確かに、現行制度では相続税評価額を下げる効果が期待できるケースがあります。しかし一方で、税務上のリスクや制度改正の可能性も指摘されています。
今回は、不動産小口化商品の仕組みと、相続税対策としてのポイント、そして注意点について税理士の視点から整理して解説します。

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■不動産小口化商品とは

不動産投資は通常、数千万円から数億円といった大きな資金が必要になります。そのため個人投資家が単独で投資するのは難しい場合も多くあります。

そこで生まれた仕組みが「不動産小口化商品」です。

これは、不動産の持分を細かく分割し、複数の投資家が共同で投資できるようにした金融商品です。比較的少額から不動産投資に参加できる点が特徴です。

主な種類には次のようなものがあります。

・任意組合型
投資家同士で組合を作り、不動産を共同で所有・運用する

・匿名組合型
投資家は事業者に出資し、利益分配を受ける(不動産の所有権は持たない)

・信託受益権型
信託された不動産の受益権を保有し、収益分配を受ける

・賃貸型
小口化された不動産の持分を直接所有し、賃貸収入を得る

このうち、相続税評価の面でポイントになるのは

・任意組合型
・信託受益権型
・賃貸型

です。これらは「賃貸用不動産」として評価される可能性があるためです。

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■なぜ相続税評価額が下がるのか

賃貸用不動産は、相続税評価の際に

・借地権割合
・借家権割合
・賃貸割合

などを考慮して評価されます。

簡単に言うと、

「他人が住んでいる不動産は自由に使えない」

という制約があるため、評価額が下がる仕組みになっています。

その結果、

市場価格(実際の取引価格)

相続税評価額

の間に大きな差が生まれることがあります。

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■実際にあった相続税対策の事例

国税庁の資料で紹介された事例では、次のようなケースがありました。

・不動産小口化商品を3,000万円で購入
・相続税評価額は480万円
・孫へ贈与
・贈与税額は49万円

もし3,000万円の現金をそのまま贈与した場合、贈与税は約1,195万円になります。

つまり

1,195万円 → 49万円

まで税額が圧縮されたという事例です。

さらに孫は翌年、その商品を取得価額に近い金額で売却しています。結果として、実質的には3,000万円相当の資産移転が行われた形になりました。

国税庁の資料では、このような事例で

評価額が78%〜84%下がっていた

とされています。

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■ただし税務リスクには注意

ここまで見ると、「非常に有利な相続税対策」に見えるかもしれません。

しかし、重要なポイントがあります。

国税庁自身がこの事例を

「財産評価を巡る諸問題」

として取り上げているという点です。

つまり、

・行き過ぎた節税スキームとして問題視されている
・将来的に税制改正の可能性がある

ということです。

また、場合によっては

「形式ではなく実質で判断する」

として個別に否認される可能性もゼロではありません。

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■もう一つの重要な視点「投資リスク」

さらに見落とされがちなのが、

これは「投資商品」である

という点です。

例えば

・不動産価格の下落
・空室リスク
・流動性の低さ(すぐ売れない)
・事業者リスク

などがあります。

「相続税対策だから」と税務面だけで判断してしまうと、本来の投資リスクを見落とすことがあります。

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■相続対策は“税金だけ”で判断しない

相続対策を考えるとき、私はよく次の3つの視点をお伝えしています。

①税金
②資産運用
③家族への承継

この3つがバランスよく成立しているかが重要です。

不動産小口化商品も、条件によっては有効な選択肢になります。ただし、

「税金が安くなるから」

という理由だけで判断するのは危険です。

制度改正の可能性
投資リスク
家族への資産承継の形

こうした点も含めて、総合的に検討することが大切です。

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■まとめ

不動産小口化商品は、現行制度では

・相続税評価額が下がる
・資産移転の効率が高まる

という効果が期待できるケースがあります。

一方で

・国税庁が問題視している
・税制改正の可能性
・投資商品のリスク

といった点にも注意が必要です。

相続対策は「節税テクニック」ではなく、「資産承継の設計」です。

もし金融機関から提案を受けた場合は、その仕組みやリスクを理解したうえで、専門家と一緒に検討することをおすすめします。

将来のご家族の安心につながる相続対策を、計画的に進めていきましょう。