
遺留分侵害額請求とは?生前贈与との関係に注意しておきたい重要ポイント
遺産相続の場面では、特定の相続人に著しく不公平な分配が行われることを防ぐため「遺留分」という最低限の取り分が法律で守られています。そして、その権利が侵害された場合に活用できるのが「遺留分侵害額請求」です。近年は生前贈与を活用した相続対策が広まり、遺留分とどこまで関係するのかが重要な検討事項となっています。本記事では、生前贈与との関連も含め、専門家視点でわかりやすく解説します。
遺留分侵害額請求の基本的な仕組み
遺留分侵害額請求とは、遺言や生前贈与によって遺留分が侵害された相続人が、他の相続人や受贈者に対して金銭の支払いを求める手続です。2019年の民法改正により、従来の「減殺請求」から「金銭請求」へと性質が変わり、権利行使がよりシンプルになりました。請求の対象は“物”ではなく“金銭”である点が大きな特徴で、紛争の早期終結に寄与しています。専門家としては、請求期間が「侵害を知った時から1年」と短いため、迅速な判断が求められることを強調したいところです。
遺留分の範囲と誰が請求できるのか
遺留分を有するのは、配偶者、子、直系尊属に限定され、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。遺留分の割合は、相続人構成によって変動しますが、一般的には法定相続分の2分の1が基準となります。たとえば配偶者と子がいる場合、双方が遺留分を保有することになります。士業の立場としては、家族構成や遺産内容に応じて「どの範囲まで遺留分が発生するのか」を事前に整理することが、後々のトラブル防止に極めて重要です。
生前贈与と遺留分への影響
生前贈与は相続税対策として有効ですが、“遺留分の計算に組み込まれるケースがある”点に注意が必要です。特に、相続開始前の一定期間内の贈与や、特定の相続人に対する特別受益と認められる贈与は遺留分算定の基礎財産に合算される可能性があります。つまり、生前対策として財産を渡しておいても、最終的に遺留分侵害額請求の対象になることがあり得るのです。行政書士や司法書士としては、贈与時期・金額・目的を明確に記録し、後の紛争を防ぐための文書化が大切だと助言しています。
遺留分侵害額請求の進め方と注意点
請求は通常、相手方に対する内容証明郵便での通知から始まります。その後、話し合いで解決できなければ調停または訴訟へ進むことになります。金額の算定は法律と評価方法に基づいて慎重に行う必要があり、当事者同士だけでは判断が難しい場面も多いです。また、一度の判断が争いの行方を大きく左右するため、弁護士や専門士業のサポートを受けて手続きを進めることが望ましいと言えるでしょう。
生前対策と専門家への相談の重要性
遺留分侵害額請求は、相続人の権利を守る重要な制度ですが、生前贈与との関係を誤解すると、かえって家族間の紛争を招くことがあります。生前贈与や遺言を検討する際には、遺留分の仕組みやリスクを十分に理解し、適切な財産計画を立てることが不可欠です。専門家に相談すれば、遺留分を踏まえた正確なシミュレーションや文書作成が可能になり、相続トラブルの予防につながります。迷った時は早めに士業へ相談し、安心できる相続の実現を目指しましょう。