
「相続開始日」と「申告期限の起算点」について、整理してお伝えします。
「相続開始日」とは
相続開始日とは、法律的には「相続が開始した日」を指します。最も典型的には、被相続人(亡くなった人)が死亡した日が相続開始日とされます。
ただし、文言上「相続の開始があったことを知った日」という表現も使われます。実務上は、被相続人が亡くなったことを知った日=通常は死亡日と考えられています。
申告期限の起算点(いつから期限を数えるか)
相続税申告の期限は、相続開始日の翌日から数えて 10か月以内 に提出する必要があります。
具体には:起算基準 起算日 期限(相続税申告)
相続開始日(被相続人の死亡日) その翌日 その日から10か月目の日
例:もし被相続人が 1月6日に亡くなった場合、申告期限は 1月7日が起算日 → 10か月後の 11月6日が期限となります。
なお、その期限が土・日・祝日と重なる場合は、その翌日が期限扱いになります。
注意点・補足
「知った日」という表現の意味合い
条文で「相続開始があったことを知った日」とされるのは、通常その日=死亡日と捉えられます。申告期限をこの「知った日」の翌日から起算するという表現は、条文の文言をそのまま反映したもので、実務上の起算点とは乖離しません。
除斥期間・更正請求・還付請求との絡み
相続税に関する更正・決定や還付請求では、別の起算点が規定されており、すべてを「相続開始日」の翌日とはしない扱いになることがあります。たとえば、還付請求権の消滅時効は「相続開始日」の翌日を起算点とするとの裁判例もあります。
(還付請求については別途扱いが複雑なので、個別事案で確認が必要です。)
延納・物納の申請期限
相続税を一括で納付できない場合、延納・物納の申請も、相続税の申告期限までに所定手続を取る必要があります。つまり、10か月という期限内に延納・物納の要件を満たす申請をしなければなりません。
まとめ
相続開始日は、相続に関するあらゆる手続きの起点となる極めて重要な日付です。申告・納付の期限管理や協議の進行、登記義務への対応など、さまざまな場面でこの日を基準にした行動が求められます。万が一、相続開始日を誤認したまま手続きを進めると、重大な法的リスクや金銭的負担が生じる可能性があります。相続が発生したら、まずはこの日を正確に把握し、早めに行政書士や税理士、司法書士などの専門家に相談することが、スムーズかつ確実な相続手続きへの第一歩となるでしょう。