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「相続空き家3,000万円特別控除」と「相続税の取得費加算」――公務員にも多い“誤りやすい選択”

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2025.10.29

大阪国税局が公表した「誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係)」の中でも、特にミスが多いのが
「相続空き家の3,000万円特別控除(措法35③)」と
「相続税の取得費加算(措法39)」の併用に関する取扱いです。
実はこの2つ、**同時には使えない(選択適用)**のです。
今回は、なぜ併用できないのか、公務員の方が実務で誤りやすいポイントを整理してみましょう。

## 1. そもそも「2つの特例」は何を優先する制度か

まずは整理から。

– **相続空き家の3,000万円特別控除(措法35③)**
被相続人が一人で住んでいた家屋を、相続後に売却する際に適用できる特例。
譲渡所得から最大3,000万円を控除できる。

– **相続税の取得費加算(措法39)**
相続税を支払った人が、相続財産を売却する際に、その相続税の一部を「取得費」に加算できる特例。
結果的に譲渡益を圧縮できる。

両方とも「相続に伴う不動産売却の負担を軽減する制度」ですが、**税法上は“どちらか一方”しか選べません**。

## 2. 併用できない理由と、唯一の“例外的なケース”

措法35③および通達35-8に明記されている通り、
この2つの特例は**「選択適用」**。
つまり、3,000万円控除を使うか、取得費加算を使うかの二者択一です。

ただし、
譲渡する資産が「被相続人の居住用部分と非居住用部分を含む場合」は例外があります。

👉 **居住用部分の譲渡には空き家控除を、非居住用部分の譲渡には取得費加算を適用できる**
という分割適用が認められています。

このように、土地や建物の利用実態を正しく区分していないと、誤って申告してしまうケースが多く見られます。

## 3. 公務員が注意すべき「税務実務」と「職務上の関わり」

地方公務員の方の場合、退職後に相続・不動産売却を行うケースも多く、
自身の申告だけでなく、窓口対応や住民相談の中で本件に触れることもあります。

「空き家特例は使える」と安易に伝えてしまうと、
実際には取得費加算の方が有利な場合や、適用誤りにつながることも。

👉 **大切なのは、“どちらの特例がより減税効果があるか”を試算したうえで選択すること。**
譲渡時期・相続税額・譲渡益の見込みを総合的に判断することが重要です。

## 4. まとめ:判断に迷ったら専門家へ

税務の現場では、「併用できそうに見える制度ほど、実はできない」ことが多いものです。
今回のように「制度趣旨の重なり」を理解しておくと、誤りを防ぎやすくなります。

公務員として市民対応にあたる際も、
「一般的な制度説明」と「具体的な税額判断」は線を引く意識を持つことが信頼につながります。

【参考】
大阪国税局「資産課税関係 誤りやすい事例(土地等譲渡所得関係 令和6年分用)」
措法35条3項、措法39条、措通35-8