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「相続についてのお尋ね」が届く理由──KSKシステムが把握する“あなたの資産情報”とは

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2025.10.28

「相続についてのお尋ね」が届くと、不安になりますよね。
「なぜ自分に届いたのか?」「税務署はどこまで把握しているのか?」――その背後にあるのが、国税庁の基幹システム「KSKシステム」です。
今回は、公務員の方で「相続税がかかるのでは」と心配されている方に向けて、KSKシステムの仕組みと、相続時に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

## 1. KSKシステムとは?
KSKシステム(国税総合管理システム)は、全国524の税務署と国税局を専用ネットワークでつなぎ、すべての申告・納税情報を一元管理している国税庁のデータベースです。
平成13年から全国で運用され、現在では個人・法人を問わず、所得税、固定資産税、消費税などの情報がすべて蓄積されています。

税務署はこのデータを活用し、
– 不自然な収支や数値の変化
– 所得と資産のバランスの不整合
などをAI的に分析して、税務調査が必要なケースを抽出しています。

つまり、「KSKシステム=税務調査のレーダー網」と言っても過言ではありません。

## 2. 「相続についてのお尋ね」が届く仕組み
相続税に関しても、KSKシステムは大きな役割を果たしています。
通知の流れは次の通りです。

① **死亡届の提出 → 税務署に情報通知**
市区町村が、死亡届とともに故人の固定資産や住民情報を税務署へ送付。

② **KSKシステムで被相続人の資産を把握**
税務署は、被相続人の過去の申告データ・不動産・金融情報などを確認。

③ **相続税の発生可能性をAIが判定**
相続税が発生する可能性が高い人に対し、「相続についてのお尋ね」を送付。

このため、「全員に届くわけではない」のがポイントです。
つまり、「相続税の申告が必要かもしれない人」が抽出されているのです。

## 3. なぜ公務員の相続にも注意が必要か
公務員の方は、給与所得が安定している分、「副収入や不動産取得がない=税務調査とは無縁」と思いがちです。
しかし、相続では状況がまったく異なります。

税務署はKSKシステムを通じて、
– 被相続人の不動産情報
– 預貯金・株式・保険などの金融資産
– 贈与歴(特に3年以内の生前贈与)
までを横断的に確認します。

そのため、相続人が「預金はこれだけです」と申告しても、他の資産情報との整合性が取れない場合には、調査対象となるリスクがあります。

## 4. 2026年には「KSK2」へ進化
令和8年(2026年)9月から、「KSK2」という次世代システムが稼働予定です。
主な特徴は以下の3点です。

– **AI-OCRによる完全デジタル化**:紙の書類も自動読み取り
– **税目横断の一元管理**:相続税・所得税・贈与税を同時に分析
– **現場アクセス可能**:調査官が外出先で過去データを確認可能

つまり、これまで以上に「申告内容と資産実態のズレ」が発見されやすくなるということです。
「見逃される相続」は今後ますます減るでしょう。

## 5. 相続税対策の基本は「説明できる整理」
KSKシステムは「隠している資産」を探すだけでなく、「不自然な申告」を検出する仕組みです。
したがって、相続税対策の本質は「正しく整理し、説明できる状態を作ること」です。

公務員の方が今からできる準備としては、
– ご両親や配偶者名義の資産内容を把握しておく
– 預金の名義と実際の管理者を一致させる
– 生前贈与の記録(贈与契約書・振込履歴など)を残しておく
といった「見える化」が重要です。

【まとめ】
「相続についてのお尋ね」が届いた=“怪しまれている”ということではありません。
税務署は膨大なデータから「申告の必要性がありそうな人」をAIで選んでいるに過ぎません。
しかし、KSK2の時代には、より正確に“申告ミス”が見つかる時代になります。

だからこそ、これからの相続対策は「隠さない」よりも「整理して説明できる」がカギです。
安心して次世代へ財産を引き継ぐために、今のうちから税理士と一緒に“相続の棚卸し”を始めましょう。