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「まだ間に合う」は「もう遅い」かも?〜家族信託における「意思能力」の落とし穴〜

スタッフブログ

2025.10.24

親の老後や相続対策を考える時、避けて通れないのが「意思能力」の問題。
法律的な意味での「意思能力」がなければ、せっかく準備した家族信託や遺言書も無効になってしまうことがあります。
この記事では、特に高齢の親を持つ公務員の方に向けて、改正民法の観点から、意思能力の重要性とその確認がどのタイミングでされるのかを、実務の現場からお伝えします。

## 意思能力とは何か?

2022年の民法改正で、「意思能力がない状態での法律行為は無効」と明記されました(民法第3条の2)。
ここでいう「意思能力」とは、契約や法律行為の意味を理解し、自らの判断で実行できる力のこと。
家族信託や遺言書を作成する際、「きちんと理解した上で、自分の意志で決めた」と言える状態でなければ、その書類は法的に意味を持ちません。

## 意思能力はいつ・誰が確認するのか?

私どもクレメンティア税理士事務所では、家族信託の組成支援を行う中で、以下のような3つの段階で意思能力が確認されます。

### ① コンサル契約の段階(税理士等)

最初の相談時、ご本人と直接お話ししながら、信託内容や目的を理解していただけているかを丁寧に確認します。
この時点では、医師による診断書などは不要ですが、会話の中での反応や理解度が大きな判断材料になります。

### ② 公証役場での信託契約作成時(公証人)

実際の信託契約を公正証書で作成する際には、公証人による確認があります。
公証人は、以下のような質問を通じて意思能力を見極めます:

– 「今日は何日ですか?」といった時間や場所の認識(見当識)
– 「この信託で、誰が誰に何を託すのですか?」といった内容理解
– 「この契約はご自身の意思ですよね?」といった自由意思の確認

公証役場という慣れない環境で緊張して答えられない…ということもあり得ますので、事前の準備がとても重要です。

### ③ 信託不動産の登記手続き時(司法書士)

信託財産に不動産が含まれている場合、信託設定登記が必要になります。
このときも司法書士が委託者(親御さん)の意思能力を確認します。ここでも「理解しているか」「自分の意思であるか」は重要視されます。

## 意思能力確認の“タイムラグ”に注意!

大事なポイントは、これらの確認が1回では終わらないということ。
相談開始から公正証書作成・登記手続きまで、3〜6ヶ月かかることも珍しくありません。

つまり…
**「最初は大丈夫だったけれど、契約時には認知症が進んでいた」**
というケースが現実に起き得るのです。

## まとめ:相談は「まだ早い」ではなく「今がギリギリ」

多くの方が、「親はまだ元気だから…」と準備を後回しにされます。
でも、意思能力の確認は「その時点」でされるため、将来ではなく「今」が勝負。
1日でも早く動き出すことで、リスクを最小限に抑えることができます。

家族信託や相続対策を考えている方は、ぜひ「元気なうちに」「しっかり理解できるうちに」ご相談を。
「まだ大丈夫」が「もう遅い」にならないよう、今このタイミングを大切にしてください。

📩 ご相談・お問い合わせはクレメンティア税理士事務所までお気軽にどうぞ。