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「うちは相続税がかかるのか?」──公務員が知っておきたい“相続税の壁”の正体

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2025.10.11

「退職金や預貯金を少しずつ貯めてきたけれど、相続税って自分にも関係あるの?」
公務員の方から、こうした質問をよく受けます。

現役時代は安定した給与と退職金、共済年金、持ち家などを築く方が多く、
実は「相続税の壁」を超えているケースが珍しくありません。

今回は、相続税がかかるかどうかの分かれ目──「相続税の壁」について整理します。

【1. 相続税の壁=基礎控除額】
相続税がかかるかどうかは、**遺された財産の総額が「基礎控除額」を超えるかどうか**で決まります。

その算式はシンプルです:

👉 **基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数**

たとえば、配偶者と子ども2人(=相続人3人)の場合、
3,000万円+600万円×3=**4,800万円**が相続税のボーダーラインです。

つまり、借金などを差し引いた「正味の遺産」が4,800万円を超えたら、
相続税の申告が必要になる可能性があります。

【2. 法定相続人の数え方に注意】
この「法定相続人の数」は、民法上の相続人とほぼ同じですが、
相続税の計算上は以下のような違いがあります。

– 実子がいる場合:養子は1人までしか数えない
– 実子がいない場合:養子は2人まで数えられる
– 相続放棄があっても、**放棄しなかったものとして数える**

たとえば、子どもが2人のうち1人が相続放棄しても、
「法定相続人の数」は2人のままです。

これを知らないと、基礎控除額を誤って少なく見積もってしまうことがあります。

【3. 実際に相続税がかかるのは約1割】
令和5年の国税庁統計によると、
実際に相続税が課税された方の割合は**9.9%**──およそ10人に1人の水準です。

「じゃあ自分は関係ないか」と思うかもしれませんが、
公務員の方は退職金や持ち家、貯蓄などを合わせると**5,000万円を超えるケース**が多く、
実は“相続税の対象予備軍”であることが少なくありません。

【4. 節税よりも「備え」が重要】
相続税の仕組みには、配偶者控除・小規模宅地等の特例・生命保険の非課税枠など、
課税を軽減できる制度が複数あります。

ただし、これらは「遺産の分け方」や「手続きの順序」によって結果が大きく変わります。
たとえば遺産分割協議がまとまらないまま10ヶ月を過ぎると、
特例が適用できず、**数百万円単位の損**になるケースも。

相続税対策=節税テクニックではなく、
「家族が困らないための準備」として捉えることが大切です。

【5. まず“自分の壁”を知ろう】
あなたの家庭にとっての「相続税の壁」は、
法定相続人の数をもとに次のように計算できます:

| 法定相続人の数 | 相続税の壁(基礎控除額) |
|—————-|————————–|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |

この金額を目安に、
現在の預金・不動産・生命保険などをざっくり合計してみてください。
もし壁を超えそうなら、早めに税理士などの専門家へご相談を。

【まとめ】
✅ 相続税の壁=「3,000万円+600万円×法定相続人」
✅ 公務員は退職金・不動産で壁を超えるケースが多い
✅ 相続税対策=節税より「家族が困らない準備」
✅ まずは自分の“壁”を知ることからスタート

「自分にはまだ早い」と思っているうちに、
備えのチャンスを逃す方も少なくありません。

今のうちに、自分の資産を“見える化”しておくこと。
それが、家族への最良の相続対策になります。

(執筆:小林 匠|税理士・CFP®・クレメンティア税理士事務所)